消えない言葉.1

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コラム
人は誰しも知らない間に
誰かを傷つけているかも知れません。
何気なく言った、一言が
誰か大切な人の人生を狂わしてしまう。
もちろん、自分の人生までも・・・。

"言葉"はコミニュケーションを取る上で
とても大切なものでもありますが
どれだけ仲が良く、どれだけその付き合いが
長いものだとしても
凶器にもなるものだと
忘れてはいけません。

どちらも長い間連れ添った
夫婦のお話しです。
2つのケースを紹介します。

まず1つめのケース。
もうじき金婚式を迎える夫婦。
夫は何よりも妻を大切にし、他のどの夫婦に比べても
"愛妻家"だと言えるでしょう。

定年を過ぎても仕事を続けていた夫は、そろそろ妻のために
仕事を辞め、自身が大好きな沖縄に一緒に旅行に行こうと
計画をしていました。
そんな中、夫は知り合いから
『もし、仕事を辞めるなら、手伝って欲しい仕事がある』と
誘いを受けました。
その仕事を引き受けてくれるのなら
新しく住む家は用意をするし、家賃もいらない
食費だって、出してもいいと言っていました。
そして、身体が続くまで
そこに居てもらってもいいという
定年を過ぎ、社会から一線を引こうと考えていた
老兵には、夢の様な条件でした。
ただ1つの事を除けば。

知り合いが出した条件は
そこで保障してくれる生活費は1人分
つまり妻の分は出ないのである。

夫は迷っていた。
本来なら、これから妻と2人で過ごそうと計画していた事が
又遠のく事になるのだから、当然断るつもりだった
ただ勤務場所が実に魅力的だった。
その場所と言うのは【沖縄】だったのだ。

『生活の変化を何より望まない妻の事だから
きっと1人で行ってくれとなるだろう。20代の頃転勤の話が出た時も
1人で行って欲しいと言っていたくらいだから。』
そこで働いている間は、当然妻とは別居になるが
自身に生活費がかからない分、妻にお金の事を気にせず
暮らしてもらえるし、妻さえ良かったら
旅行感覚で沖縄に遊びに来てもらっても
いいのだから、夫婦にとっても、好条件に思えた。

夫は、数日で知り合いに連絡をし申し出を受けた。

ある夜
夫は妻にこの話を切り出してみた。

『知り合いが仕事を手伝ってくれないか?と言って来たんだが』
『あら、そうなのね。今の仕事辞めるの?』
『あ・・・ああ。かなりの好条件なんだ。
家も借りてくれるって言うし。』
『家?』

家と聞いた瞬間に妻の顔が曇った。
それに気づいた夫は、畳みかける様に話を急いだ。

『ほら、君だって遊びに来れるし、働けるだけ
働いていたら、老後の蓄えにはなるし。
向こうでの生活費はかからないって言うし。
なにより、いい所なんだ。』
『どこ?』

『沖縄なんだよ。前から僕が働いてみたいって
言ってただろ?僕は向こうで働くから
君はこっちで・・・留守番・・・』

妻は夫の話を遮り、静かに話し始めた。

『あなたは、いつもそうね。何をするのも
1人で決めて、1人でやる。相談も無しに。
夫婦ってなんですか?私は必要ですか?
そんな大切な事を、又1人で決めたんですね。』
『いや、それは・・・。以前君だって転勤の話が出た時に・・・』
『一体今いくつだと思っているんですか?
お互い、身体の事を第一に考えないといけない年齢に
なっているんですよ。無理が出来る若い頃の話では無いんですよ。』

そこから夫が何を弁明しようが妻は聞く耳を持たなかった。

次の日から夫の生活は変わってしまった。
笑いと会話に満ちた生活は無くなり
妻は家事と名の付く事は一切しなくなった。
そして、そんな生活が数か月続いた後
1枚の離婚届けを残して妻は家を出て行った。

妻からの離婚の申し出は
夫としてショックだったが
妻の意思は変わらないだろうと
話し合いも持たず
どうしても若い頃からの夢である
沖縄で働けるという
知人からの申し出を断る理由を見つけられず
離婚届けに判を押した。

そして、落ち着いた頃に
知人に『いつでもそっちに行ける』と言う連絡を
入れることにした。

『あ~・・・すまない。あの話忘れてくれ。
考えていた事業の資金が借りれず白紙になったんだ。
又、資金が用意出来たら、連絡するから
それまでそっちで頑張っていてくれ。』

男は愕然とした。
てっきり仕事が出来るものだと
仕事を退職していたのだった。

男はこう話していました。

『こういう所だったんですよ。
妻が言っていたのは。
何でも自分勝手に決めて、何でもよく考えもせず
やってしまう。結局は、身から出た錆び。
新しい仕事先を探さないと・・・。』

その人は、何を優先して
何を決めて、誰のために動いたのでしょうか?
そして、これから
何を目標に"暮らす"のでしょうか?



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