「大黒柱」であることの重圧、
そして「自分らしく生きる」ことへの不安――
本音を語り始めた内科医と、その心に寄り添う心理士の対話。
🌿責任感が強すぎて、疲れてしまう方へ。
ASDやHSP傾向を持つ方向けに、
カウンセリングの視点で具体策をお届けします。
👩⚕️心理カウンセラー・篠原光のカウンセリングルームより
ここから先は、ある内科医の男性が、カウンセリングを通じて
「自分の人生を取り戻す」プロセスをたどった実録です。
ここでは、この男性を黒川さん(仮称)とします。
本記事では、実際の対話に即したかたちで、
彼の言葉と私の回答を交互に掲載していきます。
同じように「働くこと」「生き方」で悩んでいる方にとって、
何かヒントとなれば幸いです。
[1]🛌休職の決断と生活費の不安
👔黒川さん:
先日のカウンセリングのあと、
思い切って病院の上司や院長に相談してみました。
その結果、しばらく休職することになりまして。
給料は出ないんですが、傷病給付金という制度があるそうで、
一定期間はそれで生活できそうです。
妻にも話して、なんとか理解してもらえました。
でも、正直、これでよかったのか、少し不安もあります。
👩⚕️篠原:
よく決断されましたね。それだけでも、大きな一歩です。
不安になるのは自然なことですから、
まずは「休む」ことに集中していきましょう。
[2]💸借金・学費・妻への申し訳なさ
👔黒川さん:
でも、仕事を休むことで気は楽になるのですが、
生活費はなんとかなりそうとは言ったものの、
本当はお金のことが心配なんです。
以前負ってしまった借金の返済も残っていますし、
大学生の子どもと、大学進学を目指す高校生がいて、
学費や進学費も心配で……。
妻は働いてくれていますが、私ほどの収入があるわけではなくて、
家事も任せきりで。
私が休むことで――というか、
妻があてにしていた私の給料や賞与がなくなることが、
申し訳なくて仕方ないんです。
考えれば考えるほど、気持ちが沈んでしまって……。
👩⚕️篠原:
ご家族への責任感がとても強いんですね。
だからこそ、
今の状況を「申し訳ない」と感じてしまうのも無理はありません。
でも、いま黒川さんが一番しなければならないのは、
「倒れないこと」です。
休むことは、ご家族のためでもあるんです。
[3]🏠妻の強さと「私の存在価値」
👔黒川さん:
倒れない事ですか、、、そうりゃそうですね。
妻は「仕方がないね」と言ってくれたのですが、
本心はどうなのか不安なんです。
私がこういう状態だから、なおさら子ども達のために、
懸命に仕事や家事をやってくれていると思います。
でも、本当に今の妻と結婚してよかったと思います。
一家の大黒柱が妻みたいなものです。
👩⚕️篠原:
黒川さんの奥さま、本当に頼もしい方ですね。
でも、そんな奥さまが踏ん張れているのは、
黒川さんの存在があってこそですよ。
いまは「自分が支えなきゃ」から「お互いを支える」時期に変わった
――そう思ってもいいのかもしれませんね。
[4]🧑🤝🧑信頼というかたちの支え
👔黒川さん:
私の存在があったからこそ、なのですか?どうしてなのでしょう?
私はここ数年仕事を休みがちで、それを咎めることもありませんでした。
転職はしませんでしたが、
医師から事務職に変えたときも、咎められることはありませんでした。
子育ても、家事もほぼ妻に任せっきりで、
料理なんて作ったことがないくらいです。
米研ぎくらいはやりますけど(笑)
👩⚕️篠原:
きっと奥さまは、黒川さんを「責める必要がなかった」んだと思います。
黒川さんの選択や弱り方を、
まるごと受け止めようとしてきたのでしょうね。
そして、それができたのは――
黒川さんが奥さまに「安心」を与える存在だったからだと思います。
たとえ表立って何かをしていないように感じても、
黙ってそばにいてくれたり、
弱さを見せてくれたりすること自体が「支え」になることもあるんです。
けれども、黒川さんの心には、もう一つの大きな迷いがありました。
それは「自分の存在意義」と「家族との関係性」。
そして話題は、思いがけず息子のことへ――。
ここから先は、少しずつ「自分と向き合う」時間が始まります。