「日本の小学生といえば?」と聞かれて、真っ先に思い浮かぶのが“ランドセル”。赤や黒の四角い通学バッグを背負った子どもたちが、列になって登校している姿は、日本独特の風景ですよね。
でも、日本に長く暮らす外国人の私からすると、こんな疑問がわいてきます。
「なぜ全員が同じカバン?」
「なぜこんなに高くて重いものを使うの?」
「もっと自由でもいいんじゃない?」
今回は、外国人の視点から“ランドセル文化”を見つめ直し、他の国とどう違うのか、そして現代の子どもたちにとって、本当に必要なものなのかを考えてみたいと思います。
1. ランドセルの歴史とその成り立ち
ランドセルの起源は明治時代。
もともと「背のう」と呼ばれる軍用の背負い袋をモデルに、1887年に学習院で皇太子が使うために採用されたのが始まりです。
その後、徐々に全国へと広まり、昭和の中頃には「小学生=ランドセル」が当たり前の文化となりました。
ただし当時と今では、社会も教育環境も大きく変わっています。
果たして2025年の今も、「6年間同じカバンを全員が使う」というルールを守り続ける必要があるのでしょうか?
2. みんな同じ。個性はどこに?
ランドセルといえば、形は基本的に四角くて硬い箱型。最近は色のバリエーションが増えたとはいえ、素材やデザインの自由度はほとんどありません。
たとえば、アニメが大好きな子が「ポケモンのリュックを持ちたい!」と言っても、
「周りの子と違うと目立つからダメ」と親や学校に言われてしまうことも。
「みんなと同じ」であることが求められ、子どもたちが自分の好みや個性を表現する場が制限されているように感じます。
3. 海外ではどうしてる?
中国や、アメリカ・カナダ・ヨーロッパなど多くの国では、
小学生の通学バッグといえば リュックサック が主流です。
特徴を挙げると:
• 形・色・素材・デザインが自由
• 子どもが好きなキャラクターや色を選べる
• 成長や好みに合わせて買い替えもOK
• 軽くて機能的。価格も2,000円〜6,000円ほど
学校がバッグの形を指定することはほとんどありません。
むしろ「好きなものを選ぶ自由」を尊重していて、子ども同士でも「誰が一番かっこいい(かわいい)バッグを持っているか」が話題になることも。
面白いのは、日本と逆で「他の人と同じデザインは嫌!」という意識が強く、できるだけ人と被らないリュックを選ぶ傾向があることです。
4. 実際どうなの?ランドセルのデメリット
● とにかく重い
ランドセル自体が約1.2〜1.5kg。
そこに教科書・ノート・水筒・体操服などを入れると、5〜6kgになることもあります。
毎日これを背負って歩く小学生の姿を見ると、「本当に大丈夫?」と心配になります。
● 価格が高すぎる
平均で5万円以上、高いものだと10万円を超えるランドセルも。
兄弟がいる家庭や、経済的に余裕のない家庭には大きな負担です。
ちなみに、海外のリュックは3,000〜5,000円程度のものが主流で、数年おきに買い替えるのが当たり前。ランドセルは「高いのに6年間もたせなければならない」というプレッシャーがあります。
● 選べない=個性がない
みんな同じような形・色のカバンを使っていて、「自分らしさ」を出せる場面が少ないのも残念です。
5. 教科書は毎日持ち歩く必要があるの?
これも、外国人としては不思議に思う点です。
最近は「置き勉(教科書を学校に置いておくこと)」が少しずつ認められてきていますし、タブレット学習やデジタル教材も普及しています。
それなのに、なぜ今も重たいランドセルに大量の荷物を詰めて通う必要があるのでしょうか?
「毎日全部持ち歩くのが“頑張ってる証拠”」という精神論が、どこかに残っているようにも感じます。
6. リュックでいいじゃない?〜現代的な選択肢〜
最近の子ども用リュックは、ただの“おしゃれアイテム”ではありません。
✅ 機能性にも優れていて、たとえば:
• 重さわずか600g〜800g
• 防水加工で雨の日も安心
• 反射材付きで暗い道でも安全
• チェストベルト付きでズレにくい
• デザインも豊富で、価格は3,000円〜6,000円程度
ランドセルと比べても、耐久性・安全性・使いやすさの面で決して劣っていません。
7. まとめ:伝統も大切。でも、もっと選択肢を。
ランドセルは、日本の文化を象徴するアイテムのひとつ。
見た目もかわいく、親や祖父母が「入学祝い」として贈る光景には温かみがあります。
でも、それが唯一の選択肢である必要はないはずです。
子どもたちがもっと自由に、自分の好きなバッグで通学できる社会。
親も「高くて重いランドセルを買わなきゃ」というプレッシャーから解放される社会。
それは、もっと多様で柔軟な教育環境につながっていくのではないでしょうか?
📌 最後に…
ランドセルに賛成・反対という話ではありません。
「選べる自由」があるだけで、子どもも親も、もっと楽になれるかもしれません。