ツインレイ 2 彼の行動は私にではない!

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母が存命中は亡き父の遺族年金があったため、なんとか生活には困らなかった。だから比較的安心して認知症の母の介護ができていたように思う。
だが、母亡き後そうはいかない。遺族年金は母がもらうべきものだからだ。私か兄が働かなければならないのだが、現在要介護の兄は、当時足腰が比較的丈夫だったものの、生活費を入れられるような状況ではなく、私が積極的に働かなくてはいけなかった。
最初はたい焼き屋で2か月ほどアルバイトをしたが、仕事がきつい上に焼き方が下手だと店内中に響き渡る声で怒鳴られてばかりいたので合わないのだと辞めてしまった。

ハローワークで仕事を探す話をした時、親戚の義叔母から、

「その歳になると掃除の仕事ぐらいしかないわよ」

と言われたことがきっかけで、清掃員の仕事か介護の仕事を探していたが、当時から腰痛が多少あったため、面接でバレてしまい介護の仕事は不合格。
残るは清掃員だなと再びハローワークへ行く。
2つあった。
私が住んでいるところは、自衛隊基地や米軍基地が点在する街。
清掃員の仕事は米軍基地と防衛大学校があった。外国人は怖いなという気持ちがあったため、即防衛大学校の清掃員に応募。
さっそく所属会社が指定した防大敷地内にある場所へ面接に行った。
腰痛のことは内緒にしておこう。バレたら雇ってもらえないかもしれないから。
面接が無事終わり、敷地外のバス停ベンチに座る私。

ホッとして晴れた初秋の空を見上げた時、とても大きな龍雲があった。それはそれはびっくりするほどの大きな龍雲だった。ずっと見ていた私。
なんだか、よく来たな( `ー´)ノと挨拶されたように感じた。

幸先いいな。

とりあえず面接は通りそうな気がした。ところがなかなか連絡がこないのである。

ダメか…ダメだな…

諦めた1週間後に連絡がきた。当初入る予定の場所ではなく体育館だった。思えばそのこと自体ツインレイに出会えるようにできていたのかと思うくらいだ。神様が設定したのかもしれない。
とりあえず仕事できるならどこでもいい。仕事をして収入を得ることが肝心だからだ。そこは、清掃していた人がいる場所だったが、1か月ほど家族関連で仕事を休んでいたために急きょそこに配属されたのだった。1か月経ったら予定の配属場所に移ることになった。
だが慣れてくると他へ移るのがいやになってくる。ここは私の清掃範囲だという意識が生まれてしまった。せっかく慣れたのにわざわざ新しい人間関係を構築するのがいやだった。もともと人と接するのがいやで一人でいるほうが好きで、せっかく孤独にゆったり仕事できるのにと思った。まして新しい場所の人たちのいやな噂を耳に入れられてよけいに憂うつだった。
そんなことを思いながらも日は過ぎていく。

ここは体育館だから校友会と呼ばれるクラブ活動をする学生たちがTシャツやジャージなので頻繁に出入りしている。体育館の入り口付近は広いため何かの校友会の学生たちが柔軟したり体操したりしていた。帰りは地下にある休憩室から上がって、校友会に勤しむ学生たちの横を通って外へ出ることになる。

毎日のそんな繰り返しの中、すっかり体操部かと思っていた学生たちが一斉に声をあげた。

オッス!

びっくりした私だったが、どうせ私の後ろ側を誰かが歩いていてその人に声をあげたのだろうと完全に思い込んでいた。私のようなつまらない人間なんかに声をかける人なんかいるわけないのだ。いつも通り悲観的な私。

しまいには、
いいなぁ私もそんな風に挨拶してもらいたいなぁ
とまで思っていた。

だが、どうやら私の後ろには誰もいなかったようだ。

え?
私?
うっそー!

こんなつまらない私に声をかける馬鹿な人なんているの?いるわけないじゃないの!
ましてや若い彼らが私に声をかけるなんてホント!ありえない。悪い妄想はいつだっていくらでもできる。

あのおばさんつまらなそうだな。
へんな女にしかみえないよな(笑)。
反応悪そうだしな。

どうせ悪いことしか思われないのだからと、私は気にしていないそぶりで堂々と帰っていった。

翌日の夕方、また同じ団体が柔軟していたり体操していたりしてる。1日の仕事を無事に終えた私はまた彼らの横を通り過ぎて帰ろうとする。
昨日よりまばらだが、またオッスと声がかかる。
若い彼らに声をかけられるのに慣れていない私だったのも手伝い、前日に無視してしまった私はどうしていいのかわからず頭の中も固まった状態でまたもや同じことを繰り返した。

3日目、まだ挨拶してくれる人が少なからずいた。ここまで無視してしまうとこちらから挨拶するのさえ抵抗を感じてくる。もう無理だ。馬鹿な私だ。
そのうち彼らの横を通って帰るのがいやになってきた。その中でなぜかじっと睨みつけてくる学生がいた。その学生は一番遠い場所に座って私を睨んでいた。目が悪い私であったが、なぜかそれはわかった。けどその学生の顔立ちはまったく分からなかった。

この時まだお互いにツインレイという言葉は知らない。





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