売れる理由は「快感」と「不快感」!顧客心理を動かすマーケティング

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ビジネス・マーケティング
現代の消費者は、かつてないほど複雑な行動パターンを示しています。情報過多の社会において、顧客の購買決定プロセスは、もはや単純なニーズやウォンツだけでは説明できません。そのためにも、彼らの深層心理に潜む、より根源的な欲求を理解することが、マーケティングにおいてますます重要になっています。

それでは、どうすれば、顧客の深層心理を把握できるのでしょうか?

そのヒントとなる重要な視点が、「快感」「不快感」という、人間の行動を突き動かす2つのシンプルな軸です。人は本能的に「快感を得たい」「不快感を避けたい」という欲求を持っており、顧客が商品を選ぶ際には、必ず「快感の追求」または「不快感の回避」といった心理が働いています。

この記事では、「快感・不快感」という視点から顧客心理を分析し、セグメンテーション、商品開発、プロモーションなど、マーケティング戦略全体へ応用する方法を具体的に解説していきます。

人は「快感」を求め、「不快感」を避ける

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私たちは、常に「快感」を求め、「不快感」を避けようと行動しています。これは、心理学の様々な理論からも説明できる、人間の本質的な欲求です。

行動主義心理学では、行動の後に「快感」が得られると、その行動が強化され、繰り返されるようになるとされています。例えば、美味しいものを食べると「快感」を得られるので、私たちはまたその食べ物を求めるようになります。

逆に、「不快感」をもたらす行動は避けられるようになり、痛みを伴う経験は繰り返さないように学習していきます。

また、神経科学では、脳内の「報酬系」と呼ばれる神経回路が「快感」に重要な役割を果たしていることが分かっています。目標を達成したり、美味しいものを食べたりすると、報酬系が活性化し、ドーパミンなどの神経伝達物質が放出されます。このドーパミンの働きによって、私たちは「快感」を感じ、さらに行動を促されるのです。

日常生活を振り返ってみても、「快感」と「不快感」が私たちの行動を左右していることが分かります。

□快感を感じる行動
好きな音楽を聴く、旅行に行く、趣味を楽しむ、目標を達成する、褒められる、人から感謝される

□不快感を感じる場面
空腹、痛み、寒さ、暑さ、騒音、ストレス、人間関係のトラブル、失敗

この「快感」と「不快感」は、ビジネスにおいても大きな影響を与えています。顧客は、商品やサービスを通じて「快感」を得たり、「不快感」を解消したりするために購買行動を起こします。

例えば、顧客が「美味しい」「楽しい」「便利」「安心」といった「快感」を感じられる商品やサービスを提供できれば、顧客の購買意欲を高められます。また、顧客が抱える「不安」「不満」「不便」「面倒」といった「不快感」を解消する商品やサービスも、顧客からの支持を得られるでしょう。

このように顧客の「快感・不快感」を深く理解し、その心理に寄り添うことが、ビジネス成功の秘訣と言えます。

「快感・不快感」を軸にした顧客セグメンテーション

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「快感」と「不快感」。

この2つの感情は、人間の行動を決定づける重要な要素です。しかし、ここで忘れてはならないのは、「快感」と「不快感」の感じ方は、人によって大きく異なるということです。

同じ状況であっても、ある人にとっては「快感」であることが、別の人にとっては「不快感」になることは、日常で頻繁に起こります。

例えば、「大勢で賑やかに過ごすこと」を想像してみてください。

社交的で刺激を求める人にとっては、仲間とワイワイ過ごす時間は最高の「快感」となるでしょう。反対に、一人で静かに過ごすことを好む人にとっては、「大勢の人の中で気を遣うのは疲れる」「騒がしいのは苦手」と感じ、「不快感」を覚えるかもしれません。

このように、「快感」と「不快感」は主観的なものであり、個人によって感じ方が大きく異なります。

だからこそ、マーケティングにおいても、顧客一人ひとりの「快感」と「不快感」を的確に見極めることが重要です。

顧客の感じ方を無視して、画一的なマーケティング戦略を展開しても、効果は限定的です。それぞれの顧客にとっての「快感」を追求し、「不快感」を回避するような、きめ細やかなマーケティング戦略が必要となるのです。

顧客の「快感」と「不快感」をどのように見極め、マーケティングに活かしていくのか?

そのための具体的な方法として、ここでは「エニアグラム」という心理学モデルを活用した顧客セグメンテーションについて解説していきます。

エニアグラムによるセグメンテーション

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顧客の「快感」と「不快感」をより深く理解するために、ここでは「エニアグラム」という心理学モデルを活用したセグメンテーションについて解説します。

エニアグラムとは、人間の性格を9つのタイプに分類し、それぞれのタイプの特徴や行動パターンを分析する心理学モデルです。それぞれのタイプは、「快感」と「不快感」に対する反応、そして根底にある欲求が異なります。

※参考 エニアグラムの9タイプ それぞれの特徴

エニアグラムタイプと「快感」「不快感」
エニアグラムタイプ別の「快感」と「不快感」は以下の通りです。

タイプ1
 快感:バランスが取れている、誠実である
 不快感:欠点がある、怠惰である
タイプ2
 快感:愛されていると感じる
 不快感:ありのままの自分を受け入れられない
タイプ3
 快感:自分に価値がある、周りから良く思われる
 不快感:自分に価値がない、結果を出せない
タイプ4
 快感:自分の存在意義を見つけること
 不快感:自分が個性的でないこと
タイプ5
 快感:自分に能力があること
 不快感:自分が無力で価値を示せないこと
タイプ6
 快感:頼れる人や支えがあり、安全なこと
 不快感:自力で生きていくこと
タイプ7
 快感:多忙で好奇心が満たされていること
 不快感:楽しみを取り上げられること
タイプ8
 快感:自分で自分を守り、意思決定すること
 不快感:他人にコントロールされること
タイプ9
 快感:心が平穏であること
 不快感:穏やかな日常が奪われること

タイプ別マーケティング戦略

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エニアグラムの各タイプに対して、効果的なマーケティング戦略・コミュニケーション方法を具体的に紹介します。

タイプ1
正義感や完璧主義が強いタイプ1には、高品質で信頼できる商品・サービスを訴求しましょう。「環境に優しい」「社会貢献につながる」といった倫理的な訴求も効果的です。

タイプ2
愛情深く世話好きなタイプ2には、共感や絆を育むようなコミュニケーションを心がけましょう。コミュニティやイベントを通して顧客とのつながりを作り、特別な存在だと感じさせることが重要です。

タイプ3
成功意欲が高く、注目を浴びたいタイプ3には、ステータス性や希少性をアピールする商品・サービスが効果的です。成功者や著名人の推薦なども有効でしょう。

タイプ4
個性的で繊細なタイプ4には、独自性や感性に訴える商品・サービスを提供しましょう。物語性や芸術性を取り入れたマーケティングが効果的です。

タイプ5
知的で独立独歩なタイプ5には、専門知識や深い情報を提供することで信頼を得ることが重要です。論理的な説明やデータに基づいた訴求が有効です。

タイプ6
不安を感じやすく、安全を求めるタイプ6には、信頼できる保証やサポート体制を明確に示すことが重要です。安心感を与える利用者の声や専門家の意見を引用するのも効果的でしょう。

タイプ7
楽しさを求め、退屈を嫌うタイプ7には、新しい体験や刺激的な商品・サービスを提案しましょう。限定イベントやキャンペーンなども有効です。

タイプ8
権力志向でリーダーシップがあるタイプ8には、独自性や強さをアピールする商品・サービスが効果的です。限定商品やプレミアムサービスなどを提供しましょう。

タイプ9
平和主義で調和を重んじるタイプ9には、穏やかで安心できる雰囲気でコミュニケーションを取りましょう。自然体で共感できるメッセージが効果的です。

顧客のタイプを見抜く方法として、効果的なのが診断コンテンツです。「あなたに最適なライフスタイル診断」などの診断コンテンツを活用すれば、顧客のエニアグラムタイプを把握でき、顧客の「快感・不快感」に合ったサービスを提案できます。

また、アンケートなどから顧客心理を分析したり、タイプごとにパーソナライズした広告を展開するのも有効です。

このように、エニアグラムを基にした戦略を活用すれば、顧客の本質的な欲求に寄り添ったマーケティングが実現し、より高いエンゲージメントとコンバージョンを期待できます。

ビジネス事例に学ぶ「快感・不快感」の活用法

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これまで見てきたように、エニアグラムを用いることで、顧客の「快感」と「不快感」をより深く理解し、タイプ別に効果的なマーケティング戦略を立てることができます。

それでは、実際のビジネスでは、どのように「快感」と「不快感」を活用しているのでしょうか?

ここでは、様々な業界のビジネス事例を通して、エニアグラムタイプ別の「快感」を刺激する商品・サービスと、「不快感」を回避する商品・サービスを紹介します。

①エニアグラムタイプ別「快感」を刺激する商品・サービスの事例

タイプ1:社会貢献型商品の購入
タイプ1の人は、社会や環境に貢献できる商品・サービスに「快感」を感じます。例えば、フェアトレードのコーヒーオーガニックコットンの衣料品など、倫理的な消費を促進する商品を選ぶ傾向があります。

快感の要素: 正義感、倫理観、社会への貢献、責任感

タイプ2:特別な贈り物
タイプ2の人は、人とのつながりや愛情を重視するため、相手に喜んでもらうための贈り物を選ぶことに「快感」を感じます。相手の好みやニーズを丁寧に汲み取り、心を込めたプレゼントを贈ることに喜びを感じるでしょう。

快感の要素: 愛情表現、貢献、人とのつながり、感謝される喜び

タイプ3:高級ブランド品
タイプ3の人は、成功やステータスを重視するため、高級ブランド品や高価なサービスを所有することで「快感」を感じます。周囲から認められ、羨望の眼差しを向けられることに喜びを感じます。

快感の要素: ステータス、成功、承認欲求、優越感

タイプ4:個性的なファッション
タイプ4の人は、独自性や個性を表現することを重視するため、個性的なファッションやアート作品に「快感」を感じます。他人とは違う、自分だけのスタイルを確立することで、自己表現欲求を満たします。

快感の要素: 個性、独自性、自己表現、美意識

タイプ5:専門書やオンライン学習
タイプ5の人は、知識や情報を深めることを重視するため、専門書やオンライン学習サービスに「快感」を感じます。知的好奇心を刺激するような、深く掘り下げた情報を求める傾向があります。

快感の要素: 知的好奇心、知識欲、探求心、自己成長

タイプ6:安心・安全なサービス
タイプ6の人は、安全・安心を重視するため、信頼できるブランドや保証付きの商品・サービスに「快感」を感じます。リスクを回避し、不安を解消することで安心感を得ます。

快感の要素: 安心感、安全、信頼、安定

タイプ7:旅行やエンターテイメント
タイプ7の人は、新しい経験や刺激を求めるため、旅行やエンターテイメントに「快感」を感じます。様々な文化に触れたり、非日常的な体験を楽しむことを好みます。

快感の要素: 楽しさ、刺激、好奇心、自由

タイプ8:リーダーシップを発揮できる場
タイプ8の人は、権力や影響力を求めるため、リーダーシップを発揮できる環境やプロジェクトに「快感」を感じます。自分の力で物事を動かし、周りをコントロールすることに喜びを感じます。

快感の要素: 権力、影響力、コントロール、達成感

タイプ9:リラクゼーション
タイプ9の人は、平和や調和を重視するため、リラックスできる空間やサービスに「快感」を感じます。ヨガ、瞑想、スパなど、心身のリラックスをもたらすものを好みます。

快感の要素: 平和、調和、リラックス、癒し

②エニアグラムタイプ別「不快感」を回避する商品・サービスの事例

タイプ1:不正を正すサービス
タイプ1の人は、不正や不公平に強い「不快感」を感じます。そのため、不正を監視・告発するシステムや、公正な取引を保証するサービスに魅力を感じます。

不快感の要素: 不正、不公平、不誠実、ルール違反

タイプ2:孤独感
タイプ2の人は、孤独や孤立に「不快感」を感じます。そのため、人とのつながりをサポートするサービスや、コミュニティに所属できる機会を提供するサービスに魅力を感じます。

不快感の要素: 孤独、孤立、拒絶、無視

タイプ3:失敗
タイプ3の人は、失敗や恥をかくことに「不快感」を感じます。そのため、スキルアップや自己成長を支援するサービスや、成功を保証するような商品に魅力を感じます。

不快感の要素: 失敗、恥、無能感、劣等感

タイプ4:平凡
タイプ4の人は、平凡でつまらない日常に「不快感」を感じます。そのため、個性や感性を刺激するような体験や、自己表現を支援するサービスに魅力を感じます。

不快感の要素: 平凡、退屈、無個性、陳腐

タイプ5:無知
タイプ5の人は、知識や情報不足に「不快感」を感じます。そのため、専門的な知識や情報を提供するサービスや、学習機会を提供する商品に魅力を感じます。

不快感の要素: 無知、無力感、理解不足、情報不足

タイプ6:不安・危険
タイプ6の人は、不安や危険に「不快感」を感じます。そのため、セキュリティサービス、保険、防災グッズなど、安全・安心を確保できる商品・サービスに魅力を感じます。

不快感の要素: 不安、危険、リスク、不確実性

タイプ7:制限
タイプ7の人は、自由を奪われたり、制限されることに「不快感」を感じます。そのため、選択肢が多いサービスや、柔軟性のある商品に魅力を感じます。

不快感の要素: 制限、束縛、義務、退屈

タイプ8:弱さ
タイプ8の人は、弱さや依存を「不快感」と感じます。そのため、自立を支援するサービスや、自己防衛力を高める商品に魅力を感じます。

不快感の要素: 脆弱性、依存、コントロール不能、無力感

タイプ9:対立
タイプ9の人は、対立や争いを「不快感」と感じます。そのため、調和や平和を促進するサービスや、穏やかなコミュニケーションをサポートする商品に魅力を感じます。

不快感の要素: 対立、争い、不和、葛藤

これらの事例からわかるように、「不快感」を回避する商品・サービスは、顧客の不安や恐怖を取り除き、安心感を与えることで購買意欲を高める効果があります。

プロモーションへの応用

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「快感・不快感」の視点をプロモーションに活用することで、顧客の心を動かし、購買行動を促進できます。

広告コピー、キャッチコピー
言葉の選び方一つで、「快感」を刺激したり、「不快感」を回避したりすることができます。

「快感」追求型
・感情に訴求する言葉:「至福のひととき」「夢のような体験」「感動」「ときめき」
・五感を刺激する言葉:「香ばしい」「なめらか」「きらめく」「心地よい」

「不快感」回避型
・安心感を与える言葉:「安心・安全」「確実」「信頼」「保証」
・問題解決を訴求する言葉:「悩み解消」「解決」「効率化」「改善」

ビジュアル
画像や動画も、「快感」と「不快感」を効果的に表現できます。

「快感」追求型
・美しい風景、笑顔の人物、美味しそうな料理など、ポジティブなイメージの画像
・躍動感や高揚感を与える動画

「不快感」回避型
・問題やリスクを視覚的に表現した画像 (例:汚れた部屋、困っている人)
・問題解決後の安心感や快適さを表現した画像 (例:清潔な部屋、笑顔の人)

メディア別活用事例
Webサイト
・タイプ別に異なるランディングページを用意し、それぞれに最適なメッセージやビジュアルで訴求する。
・タイプ別の診断コンテンツを提供し、パーソナライズされた商品・サービスを提案する。

SNS
・各タイプに合わせたトーン&マナーで情報発信する。
・タイプ別のコミュニティを作り、共感や絆を育む。

動画広告
・タイプ別に異なるストーリーで制作し、感情移入を促す。
・「快感」追求型には、商品・サービスを使ったときの喜びや感動を表現する。
・「不快感」回避型には、問題解決のプロセスや安心感を表現する。

このように、「快感」と「不快感」を意識したプロモーションは、顧客の深層心理に訴求し、購買意欲を高める効果が期待できます。それぞれのタイプに合わせた表現方法を工夫することで、より効果的なマーケティング活動を実現できるでしょう。

まとめ

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この記事では、「快感・不快感」を軸にしたマーケティングの重要性について解説しました。

人は本能的に快感を求め、不快感を避ける傾向があり、この心理を理解することで、より効果的な顧客アプローチが可能になります。

今後のマーケティング活動では、顧客が何に快感を覚え、何を不快に感じるのかを深く分析し、広告・商品開発・顧客体験の全体に反映させることが重要です。

「快感・不快感」を意識したアプローチを取り入れ、より強い顧客エンゲージメントを実現しましょう。

なお、当方ではユーザー心理を分析できる、診断コンテンツの制作を承っています。自社に適した診断コンテンツを制作してみたいという方は、お気軽にお問い合わせください。

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