相続人が一人もいない場合

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法律・税務・士業全般
こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。

亡くなった人(被相続人)が天涯孤独の身であったために当初から相続人が一人もいない場合や、相続人の全員が相続放棄したために相続人不存在となった場合は、「利害関係人」が、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申立て」をすることができます。

なお、改正民法940条(令和5年4月1日施行)に「相続放棄をした者による管理」という規定があり、「相続放棄した者はもはや相続人の地位にはないが、相続放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続財産管理人が選任されるまで、自己の財産を扱うのと同じ注意を払って財産の管理を続けなければならない」旨が定められています。

例えば、築後何十年も経っていて資産価値がまったくなく、倒壊寸前の一軒家を相続したような場合、相続人は全員が相続放棄するのが通例です。
しかし、相続放棄した場合でも、相続放棄時にその一軒家を現に占有している相続人は、家が倒壊することにより隣家や近隣に損害を与えたりすることがないよう、相続財産管理人が選任されるまで、家を管理する責任があるということです。

「利害関係人」とは、例えば被相続人に対してお金を貸している人や、被相続人に対して未納の賃料を請求できる人や、被相続人の相続財産を事実上管理している人のことです。相続放棄した人も利害関係人に該当し得ます。

相続財産管理人には弁護士や司法書士などの法律専門職が選任されることがほとんどです。相続財産として現金・預金が少ない場合は、家庭裁判所への申立時に、相続財産管理人の報酬等として、申立人には50万円以上の予納金の納付を命じられることが通例です。

相続財産管理人は、合計3回、官報への公告をしますが、3回の公告期間の合計は10か月以上を要します。3回目の公告の期間が満了するまでに相続人と名乗り出る者が現れなければ、相続人が存在しないことが確定します。

相続人が存在しないことが確定した場合、「特別縁故者」は、10か月以上の公告期間が満了した日から3か月以内に、家庭裁判所に「被相続人の財産を私に与えてほしい」との申立てを行なうことができます。
「特別縁故者」とは、例えば、被相続人の親友などで、被相続人の療養や看護に献身的に務めた人のことです。被相続人の内縁の妻や親友が、病弱だった被相続人を付きっ切りで面倒を見るケース等がありますが、そういう人は特別縁故者に該当します。

特別縁故者からの申立てがあった場合、家庭裁判所は、特別縁故者に財産を分け与えるか否か、および、分け与える財産の額などを判断します。
特別縁故者が存在しない場合には、被相続人の財産は最終的に国庫に帰属することになります。なお、被相続人の財産が共有財産であった場合は、国庫には帰属せずに、他の共有者に帰属することになります。

以上の手続きを要するため、相続財産管理人によるすべての手続きが終了するまでに、最低でも10か月以上、通常は1年以上の期間が掛かります。

なお、令和5年4月1日施行の法改正により、「相続財産管理人」の名称が「相続財産清算人」と改められ、清算に要する手続き期間も短縮されます。令和5年4月1日以降に相続財産清算人が選任された場合は、従来は最低でも10か月を要していた清算期間が6か月に短縮されることになります。

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