私の家には不思議な梅の木がある。
その実を食べると食べた人の首から上が破裂して、その人は死んでしまうという。
きれいな花が咲く木ではある。
そして、食べた人の首が梅の木に咲くという。
とてもじゃないが試そうとは思わず、私自身はそのような場面を見たことはない。
鳥などがつまんで食べたら鳥がそうなるのではないかとも思ったが鳥がなったのも見たことはない。
縁側の近くにある木であるが、そのように気味が悪い木であればさっさと切るかとも思うが切らずにずっとある。
なかなかに不思議な家である。
話は変わるが私は好きな人がいる。
笑顔が素敵な青年だ。
つばのある緑色の帽子をよくかぶっていてかなりの男前でとてもやさしい人だ。
ちょっとのろけてしまった。
今日も、彼がやってきた。
ちなみに両親は彼が嫌いらしい。
なぜかというと金持ちの人が私に見合いを申し込んでいるのでそちらの人といいようになってほしいようなのだ。
正直、冗談じゃない、と思う。
今日はなぜか母が上機嫌に一緒に玄関にやってきて、彼に何かを差し出して、食べさせた。
お菓子だろうか。
丸い和菓子のようなものだ。
彼がそれを口に入れて食べると、急に彼の首から上がポンと破裂した。
私は、何が起こったのか理解ができず血のしぶきを浴びながら呆然と立ち尽くす。
彼だった首から下の体も立ったまま、首から血を噴き出している。
「ひ、あああああああああああああ」
その後の記憶はない。
気絶したのだろうか。
私はベッドのふちに呆然と座っていた。
夢でも見ていたのかもしれない。
私の頭の中では我が家に伝わる梅の木の迷信がぐるぐる回っていた。
気を落ち着かせようと階段を降り、縁側にある窓を見るといつもは何もかけていないのに、今日に限ってレジ袋を一部にかけている。
なんとなくその大きさが人間の頭ぐらいの大きさに見えて、そんなはずはないと思いながら、外に出て、恐る恐る下側に縛っている袋の口をほどいた。
…彼の首があった。
目を開いて、口をパクパクとさせている。
私は急いで家の中に上がり父と母を呼ぶも返事はない。
玄関に戻り靴を確認すると靴もなくなっていた。
変な冷や汗をかきながら彼の家に走って向かう。
遠目からパトカーが一台止まっているのがみえた。
私が立ち尽くしていると近所のおばちゃんが美沙ちゃん!と焦ったように肩をつかんできた。
何か言っているようだが全く頭に入ってこない。
帰るように促され、背中をさすられながらそのおばちゃんに連れられ家に帰った。
家に帰ると、先ほどはいなかった両親が家に戻っていた。
美沙お帰りとだけ。
近所のおばちゃんはすぐに帰ったようだ。
美沙あんたの状態を聞いてももらってくれるって間宮さんがおっしゃってくださってるのよ。
うまく動かせない関節を苦慮しながらかくかくと母に促されるまま居間に行くと、そこには件のお金持ちの男の人が。
何かのやり取りを父と母がその人としているのを居間の外の廊下で立ったまま眺めていた。
玄関の血しぶきはどうなったのだろう?夢でないなら彼の遺体は?
食べさせたのは母だろうか。…そんなになのか。
梅の木になった首は放っておくと1週間でしおしおになってなくなるらしい。
その後私は…
私の近所では一家無理心中があった、お化け屋敷がある。
恋人が亡くなってしまい、精神的におかしくなってしまったその家の娘さんが、両親を包丁で何度も刺し、殺して。その場に一緒にいた、娘さんに惚れていておかしくなっていても娘さんが欲しいと直談判しに来ていた男の人も刺殺したらしい。
そして、猟銃を使ったのか娘さんの首から上が破裂して肉片が散らばっていたそれはそれは凄惨な現場だった。と言われているお化け屋敷だ。
ただでさえ怖い場所だが、その家の庭に今はないが梅の木があって男女の首がゆらゆら揺れていたという話もあり、近所の人間は気味悪がって絶対ちかよらない。
私の友達のガキ大将みたいなバカもほかの心霊スポットといわれるところは行くのにここにだけは近寄らない。
近々その家が取り壊されるようだ。
70年近く空き家でボロボロでどうしようもないがずっと取り壊されなかった。
なぜかは知らない。
ようやく取り壊されるということでうちの両親もどことなくほっとした表情をしていた。
ちなみに梅の木は昔大雨が来た時に雷に打たれてから10年ほどで腐ったらしい。
おじいちゃんおばあちゃんにあの家の話を昔せがんだが真っ青な顔をして黙り込んでしまったのを見てそれから誰にも聞けなくなった。
学校の帰り道その家が目に入ったので、私はすぐに目をそらして駆け足で家に帰っていった。