真っ白な空間に、黒が混じるその時まで…

記事
小説
人間の物語、動物の物語、植物の物語。
どんなものにも、物語はある。
明るい物語。暗い物語。勇敢な物語。希望の物語。冒険の物語。光の物語。闇の物語。悲しい物語。
それぞれ、数えきれない物語がある。

この世界は、そんな物語を管理する場所である。
温かみはないが、冷たさもない、真っ白な雰囲気。

そんな世界で、
一人の少女は自分の部屋で休みをとっていた。

少女、レジーは真面目で、人一倍は物語の管理をしている。
主に担当する物語は、悲しい物語。
悲しい。それは、出会いから別れ、見送り、感情、悲哀、涙、そして、闇、災害、絶望、死、救いのない話……
他の者にとっては、手を出しづらいものだった。

管理する者にも、感情はある。
他の世界の人間ほどではないが、感情がなければ、色がない単とした作業感の形となってしまうからだ。

レジーは、最初に担当されるときは驚いたが、手を付けてしばらくして、慣れていく気がした。
冷酷、と言われることもあったが、人間には悲しみもあるのだ、闇がなければ光もない、と思いながら、悲しみの物語を管理していた。

不満を強いて言うなら、物語の中で、悲しみが繰り返されることだった。特に、血の混じったもの。
平和主義というわけではないが、そんな悲しみを見ていると、流石にこたえる。
だからといって、勝手に踏みにじったり、安々とその物語を消すものではない。
物語を作ってくれたからには、大事にしないといけない。自然を含めた、物語を作った者は、大半は作った物語を大事にしていると信じている。レジーを含めて、この世界の住民、管理者はみんなそう思っている。

だから、レジーは、物語が自然に消滅するまで、見守ろう、と誓うように思った。

そんな少女の部屋に、誰かが入ってくるドアの音がした。
この続きは購入すると読めるようになります。
残り:1,646文字
真っ白な空間に、黒が混じるその時まで... 記事
小説
500円
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す