『ブス』『デブ』と言われ続けたヘルプ

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こんにちは、玲那です。今日はナンバーワン時代にかわいがっていたヘルプの女性について。ずっとどこかで書こうと思っていたのですが、ココナラブログがあって助かりました。

※本人に掲載許可いただいてます。


■2日違いで入店した年下の女の子

梨華(仮名)と私は、とあるお店に2日違いで入店しました。先に入っていたのは梨華、私が後です。歳は私のほうが1歳上、ホステス歴も私のほうがベテラン、梨華はほぼ素人のスタートでした。

少ないながらもすでに私は顧客を持っていて、年齢や入店日が近いこともあり、入店当初から梨華は私の席にヘルプで着いてくれることが多くありました。

その1年後に私と同年代の夏生(仮名)という女性が入店。やがて夏生と私がナンバー争いをするようになりました。派閥のないお店だったこともあり、梨華はよく私と夏生のサポートをしてくれていました。


■いつも笑顔を絶やさない梨華

梨華は昼間のお仕事を持ちながらも、夜もレギュラーで働いている頑張り屋さん。睡眠時間もままならず疲れている日もあったはずなのに、いつも笑顔を絶やさない明るい子。

容姿的には、もともと胸の大きな子で、よくお客様からも外見のことをいじられていました。

世間の男性は大きな誤解をしていますが、もともと胸の大きな子は、その胸に見合った体型をしているので、少しぽっちゃりに見えます。生まれながらガリガリ&胸だけがビッグサイズ!なんてことは(私の知る限り)ありません。

梨華も胸の大きさに見合った体型で、座っていると上半身しか見えず、少しぽっちゃりして見えたのは確かです。だけど全然太ってないし、足なんてめちゃくちゃきれいなんですよ。

でも不運なことに、当時働いている女性は私を含めみんなが異様に細かったんです。私も「内臓どこに入ってるの?」と言われるくらい細かったし、夏生もガリガリだった。

そのせいで梨華の体型が目立ってしまって、お客様から「デブ」だの「ちょっとは痩せろ」だの「ブス」だの「こんな女を雇うな」だの、ひどいことを言われていました。しかも、梨華に対して直球で。

それでも梨華は「ひどーい」と笑い飛ばしていました。私たちが「大丈夫?」と尋ねても「全然大丈夫ですよ!」と笑顔。今考えたら私たちがバカです。「大丈夫?」って聞かれたら「大丈夫」って言うに決まってるのに。


■家賃催促の電話

やがて私はナンバーワンになり、毎日が想像を絶する忙しさになりました。50名座れるお店はいつもママと私のお客様で満席、それが2~3回転するので、ママも私も常にバタバタしていました。

梨華はいつも嫌な顔ひとつせず、私が抜けたお席を切り盛りしてくれていました。何かトラブルが起きてお席を抜けられないときでも「他は大丈夫です、私が何とかします」と言ってくれる。まさに右腕のような存在。

私は彼女の優しさや明るさ、頼もしさに甘えて、頼り切っていました。いつも彼女が笑顔でいてくれること、自分の忙しさを言い訳に、いつしか彼女が外見のことでいろいろ言われていることを忘れてしまっていたんです。

そんなある日、お店に一本の電話がかかってきました。出勤すると担当黒服が険しい顔で私を呼ぶので何事かと思ったら、

「梨華宛にさっき電話がかかってきました。梨華、家賃払ってないみたいですよ。督促の電話でした。まだ出勤してないって言ったら、後でまたかけるって言われたんですけど、すごい怒ってて」

びっくりしました。昼も夜も働いているのに、家賃が払えずお店まで督促の電話がかかってくるってどういうこと?と。担当黒服が「まだ本人には伝えてない」と言うので、次に電話があったら私に繋いで、と伝えました。

21時を少し回ったくらいでしょうか。また督促の電話がありました。聞けば2ヶ月滞納しているとのこと。このままだと退去してもらう、とご立腹でした。金額を聞いて、私が本人と話して払わせると言って電話を切りました。


■ホストに全財産をつぎ込んでいた

翌日、すべての予定をキャンセルして、梨華と話をしました。以下、実際の会話です。

私:なぜ呼ばれたか、分かってるわね?
梨:・・・はい。
私:どうしてこんなことになったの?
梨:・・・。
私:言わないと分からないでしょ。
梨:・・・ホストクラブに通っていました。
私:・・・え?送りに乗らなかったの?

※そのお店はアフター禁止で、必ず黒服たちが女性たちを自宅まで送り届けるのが常でした。よほどのことがない限り、送りを断るとオーナーママから厳しく怒られるという、ちょっとめずらしいお店でした。

梨:送りには乗ってました。
私:・・・一旦帰って、またわざわざ出てたってこと?
梨:はい、怒られるので・・・。
私:・・・オーナーにバレたら怒られるじゃ済まないわよ。
梨:・・・はい。
私:で?どれくらいつぎ込んだの?
梨:・・・働いたお金、全部です。電気とかも止められました。
私:なにやってるの、なんでそんなことになったの?

「・・・がんばって努力したんです。何日も何も食べないようにしたり、運動したり。でも全然痩せなくて・・・ホストクラブに行ったら、梨華ちゃんかわいいね、がんばってるねって褒めてくれるのが嬉しかったんです」

泣きながらそう言う梨華の姿に、ハンマーで頭を殴られたような気持ちになりました。

私は何をしてたんだろう。何を見てたんだろう。彼女が笑顔の裏でこんなに傷ついていたのに、私は自分が助けてもらったことにありがとうと言うだけで、彼女に甘え切って全然フォローもできていなかった。

申し訳なさで言葉も浮かばず、至らない私はこんな思いやりのないことを言ってしまいました。

「あなたもホステスなんだから、ホストがどんな気持ちでそのセリフを言っているのかくらい、分かるでしょ?」

今思い返しても最低です。自分でそう思います。なぜ真っ先に「そんな思いをさせてごめんね」と言えなかったのか。そう思っていたのに。本当にハンマーで頭をかち割りたくなります。

そのせいで、梨華にこんなことを言わせてしまいました。

「嘘でも嬉しかったんです。みんなにブスだのデブだの言われて、誰かに褒めてもらえないと保てませんでした」

この言葉でさらに私は言葉を失い、梨華に30万円ほど入った封筒を渡して家賃や光熱費等を支払うよう伝え、席を立ちました。


■ナンバー&ママの大反省会

その後すぐに担当黒服に連絡をし、ナンバーとママ、そして各担当黒服たちを集めてもらいました。何かあったことは把握していたので、全員快く集まってくれました。

状況を話したところ、全員が絶句。ホストクラブに通っていた云々はどうでもよく、そうなるまで自分たちが梨華のフォローをしていなかったこと、頼り切っていたことをみんなで猛省しました。

お客様に対して何かしらの力を発揮できるのは、ナンバーの女性とママしかいません。さらにそこで強く出られるのは、性格上、私しかいない。

そこで、梨華に何か言うお客様がいたら私が静止する、他のナンバーやママはお客様のフォロー、黒服たちは梨華のフォロー、という役割を決めました。いざとなったら圧を出すことは得意なんです、うふ。


■梨華を傷つけたら許さないぞ!

その日から、梨華がお席で何か言われていることに気付いたら、私やナンバーたちがお客様に声をかけるようになりました。

「私がかわいがってるヘルプだから、大事にしてねー」
「この子は私をよく助けてくれてる子だから、いじめないでねー」
「ただの好みの問題でブスとか言われても困るわねー」

最初はやんわりとこんなことを言っていました。それを言い続けたことでお察しくださるお客様、梨華の仕事ぶりを評価してくださるお客様が徐々に増えていきました。いつも笑顔で偉いな、と褒めてくださる方も出てきた。

ところが、口が悪いと言いますか、お酒を飲んで気が大きいと言いますか。さらに声を大にしてブスだのデブだの言う輩・・・お客様も一定数はいらっしゃるわけですよね。そういうときは私が、

「梨華は私たちの大切なヘルプ。梨華がいないと私たちは仕事が回らない。あなたがどう思おうと勝手だけど、うちに飲みに来る以上、梨華を傷つけるような言動は許さない。気に入らないならもう来てくださらなくて結構。そういう方にお願いをしなければならないほど困っているわけではない」

とハッキリキッパリ申し上げていました。その結果足が遠のいた方もいらっしゃって、梨華は「私は大丈夫なので(汗)」と言っていましたが、私は本当に心の底から『来てくださらなくて結構』と思っていました。

梨華が傷ついているとき、私の前で泣いたとき、私は寄り添えなかった。その罪滅ぼしの気持ちもありました。私にできることは、梨華が働きやすい環境を作ることしかなかった、ということもあります。

ナンバー2の夏生は私と違ってとても優しく朗らかな女性で、上記のように私からキッパリ言われたお客様方のクレーム処理をよくやってくれました。本当に大変だったと思いますが、文句ひとつ言わず、

「梨華ちゃんがそれで働きやすくなるならいいよね♪」
「お客様はまた私たちががんばって掴めばいいしね♪」

と笑顔で対応してくれていました。なぜ彼女がナンバーワンにならなかったのか(単に彼女の勤務時間が短かったせいだと思います。同じ条件だったら負けてただろうなあ)。


■ホストクラブ卒業

やがて梨華に心無い言葉を投げる人はいなくなりました。それまでは店内でのヘルプがメインだったのですが、お客様方も梨華をかわいがってくれるようになり、同伴に誘ってくださるようにもなりました。

梨華はめでたく(?)ホストクラブを卒業、足を運ぶこともなくなりました。幸いにもオーナーの耳に入ることもなく済みました。バレてたらクビになってた可能性大のお店だったので、そこも大きな心配のタネでした。

後に梨華は、

「玲那さんに『ホストがどういう気持ちで言っているか分かってるでしょ』と言われて目が覚めました。私もお客様を褒めるとき、思ってもいないことをお世辞で言うときもある。でも、お世辞だと分かっててもその言葉が拠り所になる人がいることも、身をもって知りました。私はそういう人をお金で見るんじゃなく、寄り添えるホステスになりたいです」

と言ってくれました。私よりもずっと思いやりのある、優しい子です。今はもう結婚して引退、2児のいいお母さんです。ときどき一緒にランチやお茶をしています。


■今振り返って思うこと&相方の素朴な疑問

私にとってこの出来事は、反省の宝庫と言っても過言ではないくらいです。だからこそ強く記憶に残っているし、時間が経つほどに「こうすればよかった」「ああすればよかった」と思うこと多々です。

同時に、この出来事があってから、外見に対して本人を目の前にワーワー言う人にとても嫌悪感を抱くようになりました。裏で言えばOKってことでもないですが、どんな神経で本人にそんなことを言えるのか?と謎です。

そういえばつい最近、私の相方が言っていました。

「どうして男性は女性に『ブス』だの『デブ』だの『ババア』だの『貧乳』だの、直球で外見のことを言うんだろう。女性は男性に対して直球でそんなこと言わないでしょ?女性はそう言われる痛みを知ってるけど、男性は女性が言わないから痛みが分からないから言うのかな。でも想像力が欠如してるよね、ちょっと考えれば傷つくって分かるでしょ?不思議だよね」

彼は絶対に人を悪く言わない&Xジェンダーなので、疑問なんだそうです。確かにそうだなあと妙に納得してしまいました。

もし誰かに外見批判をなさっている方がこの記事に目を通してくださったなら、ぜひとも今すぐ控えてくださることを切に願います。


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