バラが咲くのに必要な日照時間は?

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バラの栽培についての巷の情報には、あまり信頼できない、デ ータの裏付けのないものが少なありません。
たとえば、「日当たり最低4時間」。
この「日当たり」とはもちろん直射日光のことですが、我が家の狭くて日当たりの悪いマンションの専用庭に4時間も陽が差すことは断じてありません。
ピークの6月ですら3時間ほど、休眠期を除いた年間平均は2時間以下だと思います。
それでもベランダで育てているHTのパパメイアンが、年に何度も返り咲きます。



巷のバラ常識の一番の間違いは、直射日光しか見ていないこと。
東京近郊の真夏の直射日光は10万ルクスをゆうに超え、真冬でさえ7万ルクス以上あるんです。
一方で、バラの開花に必要な照度は、光合成光飽和点が3万~5万ルクスだとしたらもちろん5万ルクス以下ということになります。(つるバラのランブラーなら3万ルクスを切ると思われます)
ちなみに数年前にバラの専門家でもある上田善弘先生に伺ったところ、↓のご返事をいただきました。
『(バラの光飽和点ですが)通常は、4~5万ルックスぐらいという実験データがあります。こういう質問の際には、花を咲かせるには最低、どのくらいの光が必要なのですか、ということを意図される場合が多いかと思います。こちらの実験はほとんどありません。また、バラの品種により、様々です。感覚的には、2万から3万ルックスは必要ですね・・・というところでしょうか。』
じつは、7千ルクス程度の環境なら明るい日陰にも存在します。
たとえば、わが家では夏の日中の明るい日陰なら5千ルクス以上、2月でも4千ルクスくらいあることがわかっています。
これにもしも反射光が加わると、ミラーの大きさや距離、曲面率にもよりますが、5割増し以上の照度が稼げて1万ルクスを超えることも少なくないはず。
近距離からの平面ミラー反射なら3万ルクスだって可能でしょう。
日陰だけで1万ルクスの反射光が2時間ほどあって、これに直射日光が2時間でもプラスされれば、バラの開花には充分ということになります。
開花を要求しなければ1万ルクスほどあればバラは枯れずに育つと思っているので、必ずしも「直射日光」にこだわる必要はないんです。
だから少しでもミラー照射時間を稼ぐために、10台以上のミラーを設置して異なる角度から小庭を照らしています。(家内はけっこう抵抗があるみたいですが。。。)

これらの間接光も含めた総光量がどれくらいになるのかはわかりませんが、我が家ではHTが開花するのに充分のようです。
(もちろん日なたと比べれば花数や花付きはかなり劣るし、HTをより綺麗に咲かせるには日なたの環境が必要なことは言うまでもありませんが、中には半日陰の方が良い色が出たり生育がよかったりする品種もあるようですね。)
だから、直射日光の当たる時間だけで議論するのは、あまり意味がないと思います。
それでも最低日照時間を教えろというのであれば、あくまでフィーリングですが、反射光を利用している我が家では2時間くらいが分かれ目になるような気がします。ランブラーならそれ以下。
植物の光合成メカニズムはとても複雑で、気温や二酸化炭素量濃度によっても正味光合成速度は変わってくるため一概には言えませんが、もう一度繰り返すと、直射日光2時間に1万ルクスほどの間接光(超明るい日陰)が2時間もあれば、ほとんどのバラがちゃんと開花するのではないでしょうか。
そしてこの「間接光も含めた4時間」は、ネットで拾った記述↓に合致します。
「現時点での研究では光合成による時間的飽和点は約4時間程度と言われており、その効率も若葉に集中しているようです」
もしも事実だとしたら、たしかにこの「4時間」はひとつのスレッシュホールドかもしれませんが、でもそれは「直射日光」ではありません。
バラの開花に4時間以上の直射日光が必要だというのは、じつは正しくはないんです。
なお、バラは若葉で集中的に光合成をするらしいので、高さで日照時間も稼げるつるバラは光合成には大変都合がよく、やはり「日陰庭での救世主はつるバラ」だと自信をもって言えます。
我が家のキングギドラ、LClの新雪は、(日陰庭にしては)毎年そこそこワサワサになります。
20190514新雪.jpg

これだけ幅と高さがあるので、6時間近くどこかの葉で太陽を受けることが可能ですね。
20190514庭.jpg

ランブラーのアルベリック・バルビエやニュードーン系統が最強の耐陰性を誇るというのも、こうしたつるバラだからこそのメリットを享受していることで合点がいくと思います
注) 光合成を考える際の光の強さは、照度(ルクス)ではなく光合成光量子束密度(単位はmol/m2)を用いるべきですが(ルクスはグリーン補正や波長によるエネルギー差が影響してしまうから)、両者には明確な相関関係があり係数により近似値を得られるため、自分も一般の照度計で計測可能な(わかりやすい)ルクスを使っています。
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