孤高の花Ⅱ

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小説

※⑻ 過去に掲載したものを、改正して再投稿。【短編集(シリーズ)より】



あれから

洋一の 時間は

止まったままだった…


何もかもが

モノクロの

世界に存在し

両親の顔でさえ

スロ‐モ‐ションの様に

何の感情も無く

心を持たない・・・


ただの

無機質な

物質で

映像の様に

見えていた


典子の葬儀は

故郷 金沢市で

親しかった者のみで

執り行われた。





暫くの間

逢ってはいなかったが

洋一の恋人

和美も

列席していた。


洋一の様子は

誰もが分かる位に

衰弱している様に見えた。

兄妹の母親も

あれから

歩くのさえ・・

つらそうだった。


和美は大学で

洋一と知り合い

明るく現代的な 女性だった。

髪は惜しげもなく

断髪にし

広い額と

涼やかな瞳は

誰にも

「出来る女」を

容易に想像

させた。


東京に職を決めた 洋一と違い

和美は

この金沢を

離れられなかった。

実家は

金沢市内では有名な

老舗料亭だったのだ。


2人が恋人同士なのは

周りが皆 認め

結婚は時間の

問題と思われた



いきなり

洋一が東京に

就職して

周りを唖然と

させたものだった・・。



今も和美は

消え入りそうな 洋一を気遣い

そばに付いていたが

洋一には

その和美の

存在さえ

まるで

目に入らない様に


見えた…










葬儀が終わった

洋一の実家では

それでも

慌ただしく

近隣の人達が

入れ替わり立ち替わり

出入りしていた。



両親は揃って

教師だった。



リビングには

両親と洋一

和美の4人に

なった。


和美は濃い

お茶を

美しい仕草で

淹れると

遠慮がちに

口を開いた・・。
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