仕事での喋りは演技です。演技のプロといえば役者ですから、役者のよい演技を分析すれば、仕事の会話術に役立つはずです。
演技とは視線・しぐさ・セリフ、この3つの総称であり、会話でもそれらを意識するだけで格段に「話せる」ようになります。以下で順を追って説明します。
演技とはシミュレーション
演技が視線・しぐさ・セリフで成り立っているというのは、実は当たり前のことです。なぜなら、演技とは人の自然なリアクション(反応)のシミュレーション(模倣)だからです。わたしたちはいつも、まず見て、それから動き、最後に言葉を発します。
たとえば、可愛い猫が隣でニャアと鳴いたとしましょう。わたしたちは猫に目をやり、微笑み、「かわいい」とつぶやいたりします。またたとえば、「おい」と人から声をかけられたとしましょう。わたしたちはその人をまず見て、友人なら手を上げ、「やあ」と応えたりします。見知らぬ人なら体をこわばらせ、「なんですか」と尋ねたりします。
どれも無意識にやっているので気づきにくいのですが、わたしたちのリアクションは、まず反射から始まります。それはほとんどの場合、視線として表れます。そして次に、わたしたちは目から入った情報を脳で処理します。つまり見たもの・ことについて感じ、考えを巡らせます。頭の中は見えませんが、感情や思考は大抵しぐさを伴います。言葉が出るのは最後です。なぜなら、頭で考えた後でないと喋ることはできないからです。
現実でのリアクションを演技を構成する要素に対応させると、以下のようになります。
現実のリアクション⇔演技を構成する要素
反射⇔視線
感情・思考⇔しぐさ
言葉⇔セリフ
よい演技に人間らしさは不要
では、よい演技とはどんな演技のことなのでしょうか? 私はそれを理想的なロボットになることだと考えています。何やら矛盾した事をいっているように見えるかもしれませんが、そうではありません。以下で順を追って説明します。