◎消費税が大きく変わります(3)まとめ

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法律・税務・士業全般
【まとめ】
1 令和5年10月1日からインボイス制度が開始される。

2 取引の際、原則、売上先にはインボイスを発行し、仕入・外注・経費についてはインボイスを受領し保存・記帳しないと消費税の課税仕入れが受けられない。

3 従って、インボイスをもらえない外注先や飲食などは課税仕入れが受けられない。

4 インボイスを発行するためには、あらかじめ税務署に「登録番号」の発行申請をしなければならない。

5 課税売上が1,000万円以下の「免税事業者」については、「課税事業者」を選択して、消費税を申告・納税しない限り、登録番号が取得できず、インボイスを発行できない。

6 ただし、領収書等を求められない小規模な事業(業務)者(売上先が一般消費者など)は、必ずしも登録番号を取得する必要が無い。登録番号の取得は任意であるが、登録番号のない事業者は、おそらく別途消費税は請求できなくなると思われる。登録番号類似の表示や請求には罰則がある。
 (インボイス制度の導入前は、課税事業者、免税事業者に関係なく「別途消費税」を請求できた)

7 課税事業者であることが確実である場合(前々年の課税売上が1,000万円超)は、令和3年10月1日から登録番号の申請受付が開始する。インボイス制度の開始からインボイスを発行するためには、原則、令和5年3月31日までに申請する必要がある。

8 免税事業者が「課税事業者」を選択し「登録番号」を取得する場合も、原則、令和5年3月31日までに申請する必要がある。

9 消費税の申告の際の計算方法は「原則課税」と「簡易課税」の2種類がある。このうち「簡易課税」を選択するためには、原則、事前の届出(課税期間開始前)が必要である。

10 原則課税の場合、仕入・一般経費・外注費などを課税仕入れにするためには、すべてインボイスを保存しなければならない。

11 簡易課税の場合は課税売上金額に対する業種ごとの一定割合によって課税仕入金額が決まるため、インボイスの保存によって影響を受けない。

12 そのため、「課税事業者」、「選択課税事業者」(課税売上1,000万円以下で、登録番号を申請した事業者)に関係なく、「簡易課税」選択事業者が増加する可能性がある。

13 簡易課税を選択するためには事前の届出が必要であり、課税期間開始の前日までとなっている。例えば令和5年1月1日~令和5年12月31日期間を簡易課税とするためには、令和4年12月31日までに届出が必要となる。(これは従来からの制度である)

14 簡易課税制度を選択すると、確実に消費税を納付するようになる。例えば、課税売上が1,500万円の運送事業者の方の場合(第5種)、1,500万円×10%×50%=75万円となり、課税売上が800万円で課税事業者を選択した建築関係(原材料仕入がなく人工手間中心の方)の場合(第4種)、800万円×10%×40%=32万円の申告・納付が発生する。つまり、今まで免税で消費税の申告が不要だった事業者が、32万円を納付するようになるということ。

15 簡易課税を選択する場合は、事前に十分に検討する必要がある。
16 なお、重要なこととしては、簡易課税を選択した場合でも領収書等の書類の保存がおろそかでいいというわけではないのは当然です。

【所得税についても当然影響】
17 当然、所得税の確定申告にも影響する。インボイスほどではなくとも、必要経費として所得税の計算上控除するためには、請求書や領収書の保存が必須。その際、一般的な経費としては取引内容(明細)が確認できるレシートが重要です。事業者によっては、領収書を請求して請求書(明細・レシートなど)を捨てている方がいらっしゃいますが、これは絶対にやめてください。税務署からすると、「内容をごまかすためにわざとレシートを捨てている」と判断されてしまいます。今一度、再確認お願います。

18 また、業種にもよりますが、コンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケット、ディスカウントストアなどのレシートは、一般的には経費にならない場合がほとんどと考えられます。ホームセンターなども同様です。自分用の飲食物、家庭用品などは経費になりません。従って、それらが事業の遂行上必要であれば、レシートの品名に印をつけ、内容を簡記しておくか、出金伝票に記載する必要があります。使用目的や相手方などです。レシートの裏面に余白があれば、そこにメモをしておけば充分です。

19 領収書を受け取った場合で明細が無い場合、「但し〇〇代として」の欄に、自分で記入しないでください。それが正しかったとしても、領収書の「偽造・変造」になってしまう場合があるからです。その部分は「領収書発行者」が記載する箇所だからです。

20 個人事業者の税務調査では現在ゆるやかに対応していることとして、「外注費と給与の区分」があります。外注費であれば消費税の課税仕入れもでき、源泉徴収も不要、社会保険も個人まかせができます。そこで、法人課税ではその区分が厳しくなっており、外注費が否認され給与と判断される場合が少なくありません。個人でも、インボイス導入と同時に同様に厳しくなることが予想されます。その対策の第一は「請負・委任契約書など」を作成することです。現在、建築業者の方が人工(にんく)手間の外注の場合、あるいは運送業者の委託など、「請負契約書」を作成する例はほとんんどないと思われます。契約書があれば、圧倒的に有利になり、税務署に対抗できます。もちろん、内容が給与なのに「請負契約書」を作成したら、脱税になってしまいます。

※  インボイス導入導入及びその手続きにはまだ、若干時間があります。令和3年分の申告が終了すると令和5年分が消費税課税事業者かどうかが確定しますので、今から準備・検討しておいた方がいいと思われます。
                              (終わり)

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