過少申告の意図が外部から認識しうる特段の行動(重加算税)

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法律・税務・士業全般
 税務調査を受け、税金を少なく申告していることが判明すると、修正申告書等を提出するか、更正処分を受けて追加の税金が確定する。その場合、本税のほかに追加の税金(罰金)がかかる。いわゆる脱税のような行為があると、「重加算税」という一段重い罰金(加算税)がかかることになる。重加算税がかかると、延滞税にも影響を及ぼすし、通常、調査年分も増え大変な金額になる、5年以内に再調査になる可能性も高い。
 普通の加算税に代えて重加算税を課すための要件は、簡単に言うと
「課税の基となる事実を隠ぺい又は仮装し、それに基づいて確定申告書を提出」したことである。
 言い換えると、「二重帳簿を作ったり、領収書などを偽造変造し、または隠ぺいし、それに基づいた申告書を提出したこと」である。つまり申告書提出の前段階として、「隠ぺいまたは仮装」という行為が必要である。
 ところが、明らかな「隠ぺいまたは仮装」行為がない巨額の申告漏れ(脱税?)が最高裁に提起された。そこで、最高裁は、いくつかの「過少申告の意図が外部から認識しうる特段の行動」を認定し、すなわち「隠ぺいまたは仮装」としたのである(平成7年4月28日判決, TAINS Z209-7518)。
  これで大喜びしたのは国税庁、国税審判所である。「隠ぺいまたは仮装」の立証は困難で、苦労していた。しかし、この判決以来、重加算税については国税庁(国税局、税務署)も審判所も「過少申告の意図が外部から認識しうる特段の行動」の大安売りである。
 法律の解釈は文理解釈が原則である。どうみても、日本語的に考えて「過少申告の意図が外部から認識しうる特段の行動」=「隠ぺいまたは仮装」ではない。両者を同視するためには「過少申告の意図が外部から認識しうる特段の行動」は相当密度の濃いものでなければならない。なので、その判断は極めて慎重になされるべきである。最高裁判決からは、その点を大いに読み取らなければならない。ところが、安易に多用されているのが現状である。国税庁(税務署)や国税不服審判所の実務では、必ずしもその真意が読み取られていない。 小さな事実を積み重ね、それらの事実は「過少申告の意図が外部から認識しうる特段の行動」であると当てはめ、安易に原処分を維持する。「こいつは悪い奴だから罰を受けて当然」という重加算税への安易なあてはめは、およそ、法律を執行する者の公平な発想ではない。

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