むかしむかし、そのむかし、
神様は人間と同じ大地で暮らしていました。
神様は1日のほとんどを眠って過ごしました。
神様の起きている時間はとても短くて、
せっかく人々がお参りに訪れても、
願い事を聞いてもらえずにいたのです。
やがて、国は乱れ、戦が起こりました。
「騒がしいのは嫌じゃ」
神様は、おうちごとジャンプして、お山へ引っ越しました。
「ここなら静かに過ごせるじゃろう」
神様は安心して、
来る日も来る日も眠っていました。
人々は、いなくなった神様を必死に探しました。
ようやく神様を探し出して、
人々は神様のもとへお参りに行きました。
けれども神様は、また眠りを邪魔されたとお怒りになり、
別のお山へジャンプしたのです。
大地では再び戦が起こりました。
人々は、その度に神様を探し出しては、
世の平和を願いました。
神様はそのたびに、
人々を避けてはジャンプしました。
神様が何度ジャンプしても、
神様の行く先には、人々が訪れました。
いつしか時がたって、
地上には高いビルが立ち並んでいました。
神様はビルの屋上へ行ってみたくなりました。
神様は、おうちごと大きくジャンプしました。
神様のおうちは、ビルの屋上へ移りました。
ここには、木も草も生えていません。
神様は急に寂しくなりました。
すると、人々がやってきて、
神様のためにビルの屋上に、
田んぼや茶畑や小川まで造ってくれたのです。
神様が耳を澄ますと、
小川のせせらぎが聞こえて来ました。
神様はそっとおうちの扉を開けて、
外へ出てみました。
神様は田んぼへ行きました。
風に揺れる青い苗が、
お日様の陽を浴びて煌めいていました。
神様は、自分のために皆が作ってくれた、
自然の素晴らしさに感動しました。
あれから、どれくらい時が経ったのでしょう。
人々は、戦や災害や流行り病と戦いながらも、
神様を守ってきたのです。
「何と言うことだ、守るべきは私の方だ」
自分の使命がはっきりとわかった神様は、
それからは、お参りに訪れる人の
お話に、耳を傾けるようになりました。
おしまい。**