“心研究家 吉本 康幸” 1行者との出会い

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カーン、カーン、カーンと金属同士がぶつかる乾いた音が、神社の奥の林から聞こえてくる。静まりかえった境内に響く。
ここは、大阪の八尾の素戔嗚尊を祭る八幡神社ある。神社の敷地は意外と広く半反の田圃ぐらいの敷地があった。畑の中の参道を通り鳥居をくぐると、石畳が、社まで続いていた。樹齢300年の銀杏や桜が所々にあり、紅葉には少し早いぐらいである。素戔嗚尊を祭った社の奥に願仁和尚が、当時の豪族松永氏に頼まれ植樹した樹齢500年の杉が神木として聳え立っている。徳川家康も夏の陣の再参詣し神木に触れながら必勝を祈願したと言われていた。また、古墳が、神社の隣り合わせにあり、それらの神木を守るがごとく、林のように鬱蒼としていて、昼もなお薄暗い状態であった。この前有った秋祭りでは、境内や参道いっぱいに出店があり相当な賑わいだったが今は、子供達の遊び場となっている。
最初に人型を見つけたのは、朝の散歩と参詣を兼ねた近所の助六老人である。
「なんじゃこりゃ。ひゃー。恐れ多い事じゃ」と神主の家に飛び込んできた。
「すっ鈴原さん!大変じゃ、神木が呪われとる。早く来てくだされ。」
「なんじゃと、神木が呪われとるてか、どう言うこっちゃ」と助六老人と鈴原は、境内の神木の所へ行ってみた。神木には、人型の紙とわら人形が、一づつ丁度幹の胸の辺りの高さの所で、釘で打ち付けられていた。鈴原は、それを抜き取り、釘の穴を米糠で埋め神社の隅で落ち葉と一緒に焼却した。
何もなければ良いが、と思いながら3日の経過した朝再び、人型とわら人形が、打ち込まれていた。
鈴原は、恐ろしくなったので、現場をそのままにして、警察に届けた。
警察は、器物破損で、捜査を始めたが、所轄の八尾署は、いたずら目的であるが如くのおざなりの捜査の感じがした。
鈴原は、犯人も恐ろしく思ったが、神木の祟りの方が、怖かった。自分に災厄はないと思うものの一番身近に居るのも自分である。
神殿の中に入り、神鏡を見た時、昔からこういった時に、役に立った友人が居るのを思い出した。たしかこの神鏡が曇った時にあいつに来て貰って何とか輝きを取り戻したことがあったはずと自分の後輩である吉本の事の顔が浮かんだ。
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