『個別の授業で面と向かっては言いにくい話をコラムにしています。ですのでタイトルも「ひとり言」。日々の指導で気づいたあれこれを綴ります。』
アンカリング効果というのをご存知でしょうか?
出会いがしら一番初めに与えられた情報に、その後の判断が強く方向づけられることです。
本来は認知心理学や行動経済学の用語のようですが、マーケティング関連の文章でも時々見かける言葉ですね。
最近この概念が、国語の問題を解くときにも、1つの戒めとして役立つように感じています。
とくに論説文ですと、書き手の論の進め方として、いきなり自分の主張から切り出すケースはまれです。
自分の言いたいことを際立たせるために、本来の主張とはズレた見方、時には真逆の観点やそれに基づく事例などを紹介するケースはよくあります。
生徒さんの回答を見ていると、「筆者の主張のポイントとかなりズレているな」と感じることがしばしばあります。
しかし同時に、最初から最後までまるまる読み違えているというわけでもないんですね。
要旨とピントがぴったり合った回答もある一方で、まるっきり逆の意見を書いてケロッとしていたりするのは、なんともチグハグな印象を受けます。
そこで思いついたのが、アンカリング効果の影響なんですね。
文章の冒頭で筆者があえて示した"自分のものとは異なる観点"やその観点を体現したエピソードに、刷り込みのごとく影響されているのではないか、と。
ただし読み進めたり設問を問いたりするうちに、アンカリング効果は当然ある程度薄れていくわけです。
薄れてはいくのだけれど、しかし設問によっては、アンカリング効果で刷り込まれた"別の立場"の影響がぶり返して、誤答の方へ導かれてしまう…。
今回ここに書いた内容は、私にとってもまだ検証中の仮設と言うべきものです。
これから授業でさまざまな問題を演習・解説していくなかで、アンカリング効果の影響の有無をチェックしていければと考えています。