義男は車を発進させる前に自宅に電話して彼女を連れて来ると母親に言っていた。
義男と一緒に玄関を入ると母親と一匹の三毛猫が二人を出迎えた。
かずちゃんはその三毛猫を見た瞬間、遠い記憶が揺すられるような感覚を覚え微かな眩暈を感じたが車から降りた直後だからだろうと思った。
眩暈は直ぐに消えた。
両親は義男が彼女を連れて来た事を非常に喜んだ。
母親は、料亭の娘だったので今晩の食事に腕を振るった。
母親:突然だったから十分な用意はできなかったの、大した物では無いけど遠慮しないで澤山食べてちょうだいね。
かずちゃんは、こんなに美味しいもの初めてですと感嘆しながら食べた。
このお吸い物とっても上品で美味しくて高級料亭のようですと言った。
それに、この炊き込みご飯とっても美味しいです。
話は弾んだ。
父親も上機嫌で刺身で熱燗を飲んでいる。夏なのに。
日本酒は熱燗に限ると言って赤い顔で機嫌が良い。
母親;あなたは、健康そうでよろしいですわ。
かずちゃん:学生時代はずっと水泳をやっていました。
義男はなるほどと思った。
だからウエストがくびれ安産型のヒップをしているのかと思った、体型は義男の好みだった。
食事が終わり、義男はかずちゃんを連れて自室に入った。
さっきの三毛猫は先に義男の部屋に居た。
かずちゃんは、さっきと同じ感覚を覚えた。
三毛猫は、かずちゃんをジッと見つめている。
三毛猫の目が金色の光を放ったように見えた瞬間、かずちゃんのトラウマの記憶が鮮明に引き出され3年前のロロが死んで泣き崩れる瞬間の感情が蘇って来た。
義男:かずちゃん、この三毛猫は海で俺が保護して飼っているんだ。
と言ったが、かずちゃんの様子がおかしい。
ナミちゃんをジッと見つめている。
ナミちゃんも、かずちゃんをジッと見つめて二人とも固まった様に動かない。
義男:かずちゃん、ナミちゃんどうしたの?
義男は口をポカンと開けている。
何故急に私はロロちゃんの事を思い出したの?この三毛猫を見たから?
ネコなら時々、近所の飼いネコを美容室の周りで見かける事があるわ。
でも、全然ロロの事を思い出さない。
でも、今の此の強烈なロロのあの時の最後のお別れの場面が見えるのよ。
あの時の悲しい感情が私を襲うように支配しているのよ、何故?。
はっ! まさか、あなたはロロの生まれかわりなの!?
ロロへの強烈な慕情が一気に噴出した。
かずちゃんはナミちゃんを抱きしめ、あなたはロロちゃんなの!?
と一所懸命に問うている。
ロロちゃん?あなたロロちゃん?
義男はさっきまで意味が分からず口を開けて、あっけにとられていたがタダならぬ様子に義男も緊張してきた。
その時いつものようにナミちゃんの感情が義男の感覚に受信された。
感情と言うか感覚というか観念というか分からないが、義男はナミちゃんからの念のバイブレーションを感じるのだ。
言葉では無いから受けた感情を人間の言葉に翻訳する必要が有る。
義男はナミちゃんから送られてくる感情を言葉に翻訳してかずちゃんに伝えたのだ。
かずちゃん、かずちゃん僕(ロロ)かずちゃんの腕に抱っこされて、とても嬉しい。
かずちゃんが学校から戻って来る前には僕は霊界に昇っていて神様と一緒に居たんだ。
でも、余りにもかずちゃんが悲しんで僕の名まえを呼んで泣きじゃくって苦しんでいたから神様に一瞬だけ身体に僕を戻してって頼んだんだけど、そんな事をして下手すると霊界に戻れなくなって物質界に閉じ込められ自然霊となって二度と肉体を持つ事は不可能になってしまうぞと言われたけど、僕どうしても最後のお別れをかずちゃんに言いたかったので神様に無理に頼んだんだ。
神様は特例だと言って許してくれたんだ。
最後にニャ~ンと鳴いて、かずちゃんにさよならを言ったんだ。
僕は、15年の寿命を全うして霊界へ帰って行ったけど、かずちゃんが余りにも悲しんでこっちの世界へ来る行動を執ろうとして僕は霊界から見ていてハラハラしていたんだ。
僕はもう一度肉体を有って、かずちゃんと逢いたいと神様にお願いしたんだ。
神様は同じ飼い主の元に生まれる事はできないと言ったんだ。
身近でもいいからと言ったら条件があると神様は言ったんだ。
生まれて間もない頃に非常な危険で苦しい目に遭うのが条件だ。
下手すると直ぐに霊界へ戻って来る事になる。
そうなると二度と同じ飼い主と縁はできないのだと言われた。
僕は、怖い条件だと思ったけど、どうしてもかずちゃんに肉体を有って接したいと思った。天上界から、いつでもかずちゃんを見る事はできるけど、優しくかずちゃんの胸に抱かれたい。
今、僕の希望は叶った。いま、優しくかずちゃんから抱っこされている、とても嬉しい。あ~ この感覚だ!ロロちゃんは思い出している。
と言うナミちゃんの念のバイブレーションを言葉に翻訳して、かずちゃんに伝えた。
そうなのね、ロロちゃんそこ迄して私に会いに来てくれたのね。
かずちゃんは感動のあまりに嗚咽を漏らしてはいるが、同時に心のトラウマが完全に消滅した。かずちゃんはロロちゃんとの再会に信じられないと言うような表情をして何という不思議な縁なんだろうと思った。
義男は、かずちゃんをカローラスポーツハイブリッド車で送って行った。
家を出る時にナミちゃん(ロロ)は最後の最後までかずちゃんの膝から降りようとはしなかった。
かずちゃん:私ナミちゃんと(ロロ)離れたくないわ、ずっと一緒に居たい。
義男は思い切って言った。かずちゃん俺と結婚してよ!ナミちゃん(ロロ)と一緒に此処で暮そうよ。
かずちゃんは、義男の顔をジッと見つめて、いいわと言った。
明後日の日曜日のドライブの行き先は、ナミちゃんをレスキューした海岸に行こうと義男が言った。
俺とカズちゃんとナミちゃん(ロロ)と三人で行くんだと言った。
岬の先端に白く美しい灯台が陽光を反射して屹立している。
紺碧の海と空が水平線の彼方まで広がりその境界線は分からない。
カモメが頭上を飛び交う。
初夏の爽やかな風が帽子を飛ばそうとする、限り無く透明に近いブルーの海が宝石のようにキラキラと輝いている、とっても気持ちが良い所なんだよと義男は言った。かずちゃんは義男の方へ身体と顔を寄せて楽しみだわと花のような、くちびるで言った。
大団円
義男とかずちゃんとナミちゃん(ロロ)から一言
これまでずっと読んでくれて有難う
次回お会いするまでご機嫌よう。
パート1から読んでね(^^♪
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