義男は学生時代は体操部だった。だから身のこなしは軽快だ。
しかし一つで重さ90tonもの巨大な三角形の波消しブロックが数多く幾重にも積んであるその隙間から海へ降りて行くのは危険だが義男は身軽に降りて行く。
義男は足を滑らせないように慎重に素早く降りて行った。
下の方の波消しブロックには波が当ってしぶきと音が凄い。
三毛猫赤ちゃんが居る所は若干高さがあるので直截波を被る事は無いがそれでもしぶきで、ずぶ濡れになっている。
義男はやっと三毛猫赤ちゃんと同じ高さまで下りて来たが、あと三メートル位進まないと手が届かない。
しかし、ブロックの淵はここまでだ。後は海に浸かって進むしかない。でもどれくらいの深さがあるのか分からない。底を見ても絶えず波が寄せているので白波が立って底が見えない。
義男はブロックの隙間から沖の方を見た。さっき船が立てた大きな波がそこ迄迫っていた。
義男は悟った、もう一刻の猶予も無い。えい!儘よ!と義男はブロックの淵から海に飛び下りた。
幸運な事に深さは義男の腰位までだった。その儘進んで三毛猫赤ちゃんを掴める所まで来たが、義男の頭によぎったのは、此処で三毛猫赤ちゃんが逃げたらもう一巻の終わりだ。
義男は心の中で祈った。
三毛ちゃんどうか逃げないでと。
義男が右手を差し出して三毛猫赤ちゃんを掴んだ時に、これで良し!と小さな充実感を覚えた。
しかしこうしては居られない。大きな波が襲ってくる前にこの場所を三毛猫赤ちゃんを胸に抱いたまま逃げる事が最優先だ。
義男はブロックの淵に掛け上がると全身がずぶ濡れになっているのも構わず、折り重なる波消しブロックを忍者のように一気に登って行った。
つづく
義男から一言
最後まで読んでくれて有難う
パート1から読んでね(^^♪