くるみ弾①

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コラム
江戸時代、奥羽地方の山奥。
藤吉26歳はいつものように山に獲物を獲りに向かった。
ニ、三日前に獲った子ダヌキ4匹はタヌキ汁にして食べてしまった。
新たに動物性のタンパク質が必要になって来たので今朝早く嫁から、おにぎりの弁当を拵えて貰って鉄砲担ぎ慣れた山に登って行った。
藤吉は山道をどんどん上に登って行く、前回はこの辺りでイノシシの親子を仕留めた。
その前はタヌキの親子を仕留めた。
鳥なども多数獲ったのでこの辺りは良い狩猟の場所になっている。
その他、いろんな動物ウサギなど多数仕留めた。
藤吉はこの辺りで、お昼の弁当を食べ始めた。
腹が満腹になり眠くなった藤吉は其の儘、草の上で横になり、いつの間にか眠ってしまった。
小一時間位眠ったかと思われた頃に目が醒めた。
そろそろ、仕事に取り掛かるべと独り言を言いながら立ち上がった。
その時に、藤吉の耳にポンポンポンポンと言う太鼓を叩くような音が聞こえていた。
藤吉は、おやッと思った。
これから先は一本道で其の儘、頂上に続く道が有るだけなのに右の方へ分かれ道が有る。
藤吉はこの辺は自分の庭のように詳しい。
しかし、この右へ分岐する道は今、初めて見る。
こんな道が有ったかなと藤吉は不思議に思った。
俺は今、昼寝から起きたばかりだから寝ぼけているのだろうかと思って目を良く擦って見たが、頂上に登る道から右に分かれる道が一本カヤススキの雑草が生い茂る方へ延びている。
おかしいなぁ、こんな所に分かれ道なんか無かったぞと藤吉は思った。
そして猟師としてこの山を熟知している俺が知らない道が有るのは許せない。
そう思った藤吉は未知の道へ分け入った。
暫く歩くと深い森の中に出た。
こんな道が、この山に有ったのかと藤吉は当惑しながら鬱蒼と繁茂する孟宗竹を眺めながら進んでいた。
藤吉の体に冷たい風が吹きつけて来た。
その時、突然周りが急に暗くなったかと思ったその時に凄まじい落雷の光と音が藤吉に襲いかかった。
同時に土砂降りの雨が藤吉の体に叩きつけるように降り注いだ。
藤吉は急いで雨宿りができる所は無いかと土砂降りの中を走った。
すると目の前に、お泊りできますの看板がある民宿みたいな古びた家が建っているのを落雷の激しい光の中で見た。
こんな所に家が有ったなんて、しかも民宿とは藤吉は今までのこの山の知識を総動員して記憶を辿ったが、こんな民宿など藤吉の記憶には無い。
しかし、この酷い落雷の光と音と土砂降りだ。
いろいろと考えている場合では無い。
旨い具合に雨宿りが出来そうな所を見つけたと思った藤吉は一目散に民宿に走って玄関を叩いたのだ。


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