【火災経験者が語る②】人の心理の恐怖と火事の実話
――怖い。助けて。誰か、お願い。
だけど、怖いって思ったり、泣くのは後でいい。
今は冷静でいないと。自分も、他の住民の命も危ないかもしれない。
窓を開けた後、私は大通りの人達に向かって叫びました。
私「火事が起こっているんです!2階では煙が充満していて、火災の状況が分かりません。外から見た状況を教えてください。それと、消防署に連絡をお願いします!!」
男性「さっき消防署に連絡しました!あと…外側の階段が燃えていますが、その階段から降りてきてください」
…ん?うん。
爆発したばかりの ” 燃えている階段 ” から脱出…ということですね。
私(ちょっと待ってよ…めっちゃ怖いじゃないですか…)
私「分かりました!ありがとうございます。助かります!」
男性「頑張ってください!」
あぁ…はい。そうですよね。頑張るしかないですよね…。
おまけに、なぜか10人以上いる野次馬達。彼らは無言で見ているのみ。
…火を見ると安心する方々なのかもしれませんね。
そこで、私の脳内に6つの選択肢が出ます。
1. 爆発したばかりの階段を全力で駆け下りる。
2. 布団を窓の外に投げて、窓から飛び降りる。
3. 窓から思い切り飛び降りて、外車をクッションにする。
4. カーテンかタオルを濡らして強度を上げて、簡易ロープを作る。
5. 何もしない/他の策を考える(死因の46%程は逃げ遅れです…)。
6. 階段を使って上の階に逃げる(これも微妙ですね…)。
※また、窓から飛び降りる場合、物理法則/飛距離的に70%程フェンス・塀にぶつかるアパートの設計です。運が良くて骨折。最悪、失明・脳震盪・腹部に穴を開ける可能性アリ。
何この地獄の選択肢…!ベストな正解が思いつかない!!
2~4で組み合わせてもいいけど、どうあがいてもリスキー。
何もしない場合、第二の爆発が起こった時に…火傷もしくは一酸化炭素中毒になるかも。下手に時間はかけられません。
私は湯舟に水を溜めていないので…。水を溜めて、身体にかけてからというのも時間がかかります。
仕方ない。止血用・固定用のスポーツ用タオルを1枚バッグに入れて、自室の玄関に手を当てました。バックドラフト現象の兆候・扉の高温化は無い。
密室空間に近い設計のため、この辺は結構心配していました( ;∀;)
ただし、扉を開けた瞬間、私に炎が降りかかる可能性もありますが…。
私「あのさ。親に伝えてほしいことがあるの。ありがとう、ごめん。それだけ伝えておいて。死んだらごめん」
友「…生きてくれよ」
友人、カッコイイこと言ってくれますよね。ありがたい。
じゃ、玄関を開けよう。そう思った時、火災報知器が鳴りました。
ジリリリリリリリリ――。
今じゃない!もっと早く鳴ってほしかった!!
そんなことを思いながら、自室の玄関を開く。
焦げ臭い煙と熱い空気。
バッグを首にかけたまま、服の袖で口元を覆いながら。
「燃えているらしい」外の階段へ。
火災時にエレベーターは使えない。窓以外の逃げ道は”その階段”しか無い。
しかし、その外階段には扉があります。
外階段の扉を開ける時。
風向きによっては、腕1本くらい火傷する可能性があります。
さらに、私より先に誰かが開けた痕跡は無い。
一番最初に開けるのは、自分。
つまり、実際に開けてみて ” 火傷するかどうか ”を試す役目。
他の人に開けさせるくらいなら、自分がそのリスクを背負おう。
再び扉に手を当てて温度を確認。少し熱いんですけど…!?
【人の怖さ】他人を突き飛ばして脱出するシニア男性
私(仕方ない…扉を開けよう)
そして、外階段に通じる扉を開けた瞬間。
背後からシニア男性が走ってきて、
私を突き飛ばして、燃え上がっている階段に向かいました。
私(この人、私が扉を開けるの待ってたのかな…怖い)
偶然かもしれない。意図的ではないかも。
とりあえず、シニア男性さんは自分の口元に布を当ててほしい。
一酸化炭素吸い過ぎると、後が辛いと思うので…。
私はその男性に、無言でタオルを渡して「口に布を」とジェスチャーする。
意図は伝わったらしく、受け取る男性。
そのまま、燃え上がっている場所を通り過ぎるように、熱い階段を全力疾走で降りていく。怖い。熱い。もう一度爆発したらどうしよう。
幸い、私はアパートの外に出ることができましたが…。
【取り残された人達】2階の住民が最も危険だった【逃げ遅れ】
私と同じ2階に住んでいた住民の中で、
取り残された人物が2人いました。
煙で充満する部屋。窓を開けて救援を求める姿。
そこでやっと、消防車が辿り着いたのです。
…しかし。
その地域の消防署の方針か、
取り残された人に声をかけることはない。
消火するわけでもない。
彼女達の状態を確認するわけでもない。
コンビニ側から、すぐ見れるのに。
簡易的なテーブルを広げて、
アパートの構造(図面)を見て…5~6人で話し合い。
業務的に必要な行為なのでしょう。
ただし、取り残された人は酷く焦ってます。
窓を開けて、暗闇でも目立つようスマホを振ったり。
一酸化炭素を吸わないよう、
口にハンカチを当てて体を外に乗り出していたり。
………。なんだろう。モヤモヤする。
かといって、素人の私が下手に口を出すべきではない。
フェンスを上って助けに行こうと思った。
実際にやって、地面に落ちた。
咄嗟にバカなことをしたと思うけど、
私にできることはなかったんです。
ただ、何か伝えることはできるはず。
取り残された人がいるってことも、消防士に伝えないと。
急ぎ足で発火場所を確認。まだ、ギリギリ階段で降りられる。
早口で、取り残された2人に伝えてみます。
私「今、2階で取り残されている人は、窓を開けたまま極力煙を吸わないようにしてください。脱出に使う外の階段は燃えていますが、走って降りることも可能です。窓から飛び降りる選択肢もあります。
飛び降りる際は私がサポートします。鎮火を考えたら、今のままという選択肢もアリです。ただし、全てリスクがあるため、あなたの選択次第となります。私は専門家ではないし、その責任を負えません」
その言葉を聞いた1人の女性が、無言で頷く。
やがて、1分程経過した頃。窓際にいた女性の姿が消えました。
また、もう1人の取り残された人物。
外国人/高身長の男性で、恐らく肉体労働の方。
以前すれ違った時、
筋肉の付き方も踏まえて運動神経が良さそうに思いました。
つまり、唯一2階から無傷&自力で降りることが可能そうな方でしたが…。
なぜか、窓際でスマホをかざした後、
お煙草をお吸いになられておりまして。
ワイルドなのか、何かを諦めているのか。
事情は知りませんが、助けを求めているのか微妙なライン。
鎮火を待つパターンの方でした。それも、正しい判断だと思います。
やがて、消防士が消火を終えた後。
2階で取り残されていた女性が声をかけてくれました。
女性「ありがとうございます。最初、あなたが叫んだから火事に気づいたんです。でも、出るのが怖くて迷っていました。…それに、北京ダックを作っていた最中だったので。私が鶏を焦がしたのかと思いました(笑)」
私「こちらこそ、ご丁寧にありがとうございます」
その女性はどことなく可愛らしくて…
なんだか、ほっとしました(●´ω`●)
晩御飯のスケールが大きいですよね(笑)
もう1人の外国人男性は…
後々、引っ越しのお手伝いをしてくださりました。
ワイルドな行動をされていましたが、根はとても優しい方です。
【火災の原因】些細な火事で爆発が起こった理由とは
実のところ、
火事の原因は【お酒の空き缶(ゴミ)の上にタバコが捨てられた】ことです。
しかも、小さなコンビニ袋に入る範囲の少量のゴミ2袋。
その上に捨てられたタバコは2本。
お酒のアルコール濃度は3~6%、かなり低め。
中身が多かったわけでもありません。むしろ、殆ど空です。
本来ならバケツ数杯で済む程度の火事。
では、なぜ爆発が起こり2階まで炎が到達するほどの火事になったか。
※ちなみに、アパートの外面は真っ黒になっています。
実は、消防署に連絡するまでの過程が長かったんです。
以下は、お話を聞いた内容です。
①最初の発見者が見た時は、小さな火。バケツで消火できる範囲。
→「アパートの住民が気付くだろう」「誰かが気づくだろう」と、
3分程眺めて待ったそうです。
②やがて、野次馬が集まる程度に火が上っていく。
→「さすがにマズイのでは」と、5分程話を始める野次馬達。
③野次馬の1人が隣のコンビニのレジに並び、
「隣のアパート燃えているんですけど」と店員に話す。
ここまでで、10分経過しています。
④コンビニ店員が状況を確認するため、アパートへ。
→「消防署の電話番号(119)って何だっけ?」とネット検索。
その後、なぜか警察署(110)へ連絡(さらに、10分経過)。
⑤通報を受けた消防車がアパートに到着するまで、約7分。
渋滞があった模様。
この①~⑤の流れで、35分経過しているんです。
そのため「ほんの小さな火事」が「爆発規模の火災」となったんですね。
もし、お酒の濃度が高かったり、他に燃焼する素材があった場合。
…1回の爆発では済まない&死者が出ていたかもしれません。
私にとっては、人の心理の恐ろしさが顕著に出た一件でした。
もちろん、現在も消防車を呼んでいただいた方々や皆様に感謝しています!
また、前編で「突然、自分の住む土地・居場所が無くなったとしても、生きていけるスキルを身につけておくと、将来的に便利」と記載しました。
自分が原因でなくても、土地・居場所・仕事先に不安を感じることはあります。実際、私はこの一件以来、強く不安を感じるようになりました。
だからこそ、副業でココナラを続けていきたいと思います。
最後までご覧くださり、ありがとうございました!