中学生の頃の校長室登校

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コラム
『保健室登校』ではなく『校長室登校』聞いたことありますか。

私は中学生の頃一時的にいじめの標的になっていました。
家庭にも居場所がなく、学校に行けば聞こえる声で悪口を言われたり、傘を壊されたり。

だけど学校を一度でも休んでしまうと、もう二度と登校できなくなってしまうのではないかと必死でした。

担任は「虐められる原因を考えてみろ」とだけ。でも聞こえてくる悪口によると原因は‘貧乏だから’というなんとも理不尽なものでした。

やがて保健室登校になり、保健室にいてもいじめっ子が誰もいない時に数人で詰め寄ってくるので美術室に逃げ込みました。

私は美術部でした。

備品倉庫は小さな隔離部屋になっていて、どのクラスも授業で美術室を使わない時間はそこで座って過ごしていました。

とある日、美術室に一人でいると校長先生が入ってきました。
私の名前を知っていました。

「もねさん、今日はここにいたんだね」と、授業に出ていない事を責めることなく優しい口調で声をかけてくれました。

当時私は完全に人間不信になっていて声も出ません。

すると校長先生は「明日から、校長室にもしよかったら来てください」と。

翌日、保健室にいると校長先生が来ました。
そして私にこう言いました。

「もねさん、校長先生と手紙や絵の交換をしませんか」と。そして便せん二枚の手紙を置いて保健室を出ていきました。

その手紙には、私が一人で過ごしていることを見てとても心配している事や、私が美術室で遅くまで油絵を描いている事について、そして辛いときには一人ではないといった内容が書かれていたと思います。

校長先生は、私の状況をすでに知っていたのです。

家に帰っても辛いことを話せる相手もおらず本当はとても苦しかったのです。
助けてほしい。誰かに話を聞いてほしい。そうしないともう心が崩壊してしまうかもしれない・・・・ギリギリだったと思います。

手紙をもらった翌日からは校長先生と文通をしたり、校長室で話をしました。
校長先生の都合が合わない時は保健室か美術室、ひどいときはトイレの個室で過ごしました。

それが数か月ほど続いた頃に、校長先生からこう告げられたのです。

「もねさん、明日は学校休んで小学校の時の音楽の先生と一日遊んできてください」と。

校長先生は私の母校に連絡を取り、高学年の頃に心を許していた当時の音楽の渡辺先生にアポイントをとってくださったようなのです。

渡辺先生はすでに結婚のため退職されていて、私に会う時間も十分にあったとの事。

翌日渡辺先生は私を車で迎えに来てくれました。

ファミレスに行って、おなか一杯ご飯を食べさせてくれました。実は私にとって人生初のファミレスだったので注文の仕方もよくわからず先生に教えてもらいました。
ドリンクバーには付き添ってもらいました。

渡辺先生は泣いていました。

「中学校の校長先生いてくれて良かったね」と。
私は祖父母にも、たまに帰ってくる両親にも自分の状況を話せなかったので、心配して涙を流してくれる先生を目の前にして
『私がいなくなったら先生はもっと泣いてしまうかもしれない』と胸がギュッと締め付けられたのを覚えています。

翌日も校長室登校でした。

校長先生とたくさん話をしました。
美術室で初めて校長先生に話しかけられた頃とは別人のように、たくさんの言葉が私の口からあふれてきました。

ただその時点ですでに教室へ行けなくなってから、もう何日経過したかわからないくらいで、もう自分の参考書もロッカーさえもなくなっているんじゃないかなと卒業までもう二度と教室で勉強することはないと覚悟していました。

しかし、その日は帰宅すると驚くことが起きたのです。

クラスメイトの男子一人が私に一冊のノートを差し出しすぐに帰っていきました。

『…顔が見えなくなったと思ったら、今度は文章でのいじめか』
背筋が凍りました。

しかし、そうではありませんでした。

‘誕生日おめでとう’
‘教室にきてね’
‘ごめんなさい’

一言も、私への誹謗中傷の文章はありませんでした。
クラス全員からのメッセージでした。

一瞬で分かりました。
校長先生が動いてくれたんだと。

そして翌日から教室に戻ることが出来ました。もちろん違和感はあったと思います。

心のどこかで自分をこれまで苦しめたクラスメイト達を一瞬で許すなんてできませんでした。

怒りもあったと思います。今更なんだよとも思ったと思います。

だけど今になって私は、それよりも何とか私の居場所を作ってくれた校長先生や、小学校でお世話になった渡辺先生への感謝の気持ちが大きいです。

もうずっとずっと昔の事。
今のようにSNSなんてない時代の話です。

生きていると理不尽な事もあります。

居場所がないかもしれないと感じる時。
自分は一人きりだと孤独で仕方ない時。

目を閉じてじっくり考えてみたら、たとえ遠くに離れていても気にかけてくれる人は一人はいるという事を忘れないで生きていけたらいいなと思います。

長文になりました。
読んでいただきありがとうございました。




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