令和2年度行政書士試験の記述で錯誤を答えなかった理由

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 今回は、令和2年度行政書士試験で様々な議論を巻き起こした問題45の民法の記述問題を取り上げます。
 ここでは、この問題の解説ではなく、このように書き方がいくつかある記述問題が出た際に、どれを書けばよいかの考え方を書きます。これは予備校等でも言われていないと思いますので、是非最後まで読んでみてください。

1、問題文(令和2年度行政書士試験より引用(※太字は筆者))

 Aは、Bとの間で、A所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件契約」という。)を締結したが、Aが本件契約を締結するに至ったのは、平素からAに恨みを持っているCが、Aに対し、甲土地の地中には戦時中に軍隊によって爆弾が埋められており、いつ爆発するかわからないといった嘘の事実を述べたことによる。Aは、その爆弾が埋められている事実をBに伝えた上で、甲土地を時価の2分の1程度でBに売却した。売買から1年後に、Cに騙されたことを知ったAは、本件契約に係る意思表示を取り消すことができるか。民法の規定に照らし、40字程度で記述しなさい。なお、記述にあたっては、「本件契約に係るAの意思表示」を「契約」と表記すること。

2、解答

筆者:Bが、AがCから騙されたことを知り又は知ることができたとは言えないため契約を取り消せない。
試験センター:Bが詐欺の事実を知り又は知ることができたときに限り、Aは、契約を取り消すことができる。

他の問題の解答状況と通知された得点を照らすと、この問題の得点は満点に近いものであったと思われます。

3、令和2年度行政書士試験における記述問題

 令和2年度行政書士試験の記述問題では、この問題の他に行政法の分野で無効確認の訴え、民法の分野で背信的悪意者が出題されましたが、行政法の分野は比較的難しいと評価されることが多かったのではないかと思います。一方で、背信的悪意者の問題は、某予備校の記述講座を受けていた受験生は解けたと思いますが、この部分に触れていない受験生も多かったのではないかと思います。一方で、上記にも記載した意思表示の問題は、多くの予備校でも予想されており、多くの受験生が力を入れて学習していた部分だと思います。つまり、記述における唯一にして最大の得点源であったと言っても過言ではないと思います。

4、問45に関する議論

 上記の通り、問45は得点源であったわけですが、この問題を巡っては試験直後から大きな議論が起きました。それは、「錯誤」の解答が許されるのかです。上記の通り、試験センターの想定する解答は「詐欺」であり、多くの予備校の解答速報も「詐欺」でした(併せて「錯誤」の解答を出す予備校もありました)。しかし、「錯誤」で解答した受験生が少なくなかったため、SNSを中心として議論が起きました。因みに、私が試験直後に最初に見たSNSの解答速報は「錯誤」でした。それを見て凄く焦ったのを覚えています。

5、私はこの問題を何十回解いても「詐欺」で解答します

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